自分自身を「最大の批判者」にする――提案を守るより、判断を強くする

自分自身を「最大の批判者」にする――提案を守るより、判断を強くする

東京部長倶楽部の山木のぼるです。

 会議で自分の案を否定されると、内容ではなく、自分自身を否定されたように感じることがあります。経験を積み、責任が重くなるほど、「この案を通さなければ」「説明した以上は引けない」という気持ちも強くなります。しかし、部長の案は発言力があるだけに、十分に検証されないまま通ってしまう危険があります。

悔しさから始まった準備の習慣

 私は設計者の頃、レビューで上司や同僚から弱点を指摘されることが悔しくて仕方ありませんでした。そこで、人に言われる前に、自分で自分の案を厳しく点検するようになりました。別の設計案はないか、コストと性能は両立しているか、品質上の弱点はないか、前提や制約が変わったら成立するか。事前に洗い出すと、レビューで受ける質問の多くが想定内になりました。

 大きかったのは、指摘を受けなくなったことではありません。指摘を、自分を守るか負けを認めるかという問題ではなく、案を良くするための論点として扱えるようになったことです。自分自身を「最大の批判者」にするとは、自信を失うことではなく、自分の判断を他人の目に耐えられるまで鍛えることです。

批判は、決定後ではなく決定前に呼び込む

 決定後に反対意見が出ると、組織は案を守る側と覆す側に分かれます。結論を出す前なら、反論は案を強くする材料になります。「反対するとしたらどこか」「この前提が崩れたら何が起きるか」「顧客、現場、財務、他部門は何を心配するか」を先に問います。

 自分一人の点検には限界があります。現場には実行可能性を、顧客に近い人には価値を、財務には採算を、他部門には接続条件を見てもらいます。批判の数を増やすのではなく、異なる立場から同じ案を照らすのです。

反対意見を言える余白をつくる

 部長が「率直に言ってほしい」と言うだけでは、部下は安心できません。異論を出した人の評価を下げないこと、すぐに論破しないこと、課題を見つけた人へ解決策を丸投げしないことを、態度で示す必要があります。

 会議では、提案者が説明した後、最初に最も立場の低い人から懸念を聞く方法もあります。部長が先に結論を言えば、後の意見はそこへ寄ります。自分が最後に話すだけでも、見える論点は増えます。反対意見を歓迎し、対応は組織で引き受けると、批判は攻撃ではなく、失敗を予防する協働へ変わります。

 生成AIを壁打ち相手にして、想定反論や見落としを出させることもできます。ただし、もっともらしい答えを正解にせず、現場の事実と専門家の知見で確かめ、最終判断は人が担います。

自己批判を、決められない理由にしない

 欠点を探し続ければ、どの案にも不安が見つかります。目的は完璧な案を作ることではありません。判断が成り立つ前提、失敗した時の影響、異常を早く知る指標、撤退や修正の条件を明らかにすることです。

 最後には、「欠点があっても、なぜ進めるのか」「どの条件なら見直すのか」を部長が決め、責任を持ちます。批判を取り込むことと、判断を先送りすることは別です。自分の案を守るのではなく、組織にとってより良い判断を守る。その姿勢が、部下の異論と専門性を活かします。

最初の一歩

 次に提案する案件を一つ選び、反対されそうな点、崩れると困る前提、別案を一つずつ書いてください。そのうえで、結論を出す前に、自分と違う立場の人へ「この案の弱点を一つ教えてください」と頼みましょう。

編集注:本稿は山木本人の経験と確認済みのセッション記録をもとに、勤務先・製品・関係者を特定する情報を一般化して再構成しています。

Related Entry

年上の部下に、へりくだり過ぎず高圧的にもならないために

年上の部下に、へりくだり過ぎず高圧的にもならないために

感謝は気持ちだけでは届かない――リーダーが具体的に伝える

感謝は気持ちだけでは届かない――リーダーが具体的に伝える

リーダーか、マネジャーか――部長には両方が要る

リーダーか、マネジャーか――部長には両方が要る

自分を動かす問いを持つ――セルフコーチングを仕事の習慣にする

自分を動かす問いを持つ――セルフコーチングを仕事の習慣にする

発言のない会議は、賛成の証拠ではない――心理的安全性をつくる部長の振る舞い

発言のない会議は、賛成の証拠ではない――心理的安全性をつくる...

「仕事が嫌なのではない」という本音――対立しかけた関係を修復した三つの手直し

「仕事が嫌なのではない」という本音――対立しかけた関係を修復...