東京部長倶楽部の山木のぼるです。
2022年の個別セッションで、初めて部下を持つことになった受講者から、年上の部下との接し方について相談がありました。
これまで年齢が上の人には従う関係で働いてきたため、年上の部下へへりくだり過ぎてもよくない。一方、上司らしく見せようとして高圧的になるのも違う。どのような距離感をつくればよいのか、という悩みでした。
年齢への敬意と、役割上の責任を分ける
年上の部下には、自分より長い経験や、職場で築いてきた人間関係があります。それを軽く扱えば信頼を失います。
しかし、敬意を持つことと、上司として判断しないことは別です。上司には、組織の目的を示し、仕事を割り当て、必要な判断を行い、結果に責任を持つ役割があります。
年齢では相手が上でも、組織上の役割では自分が責任者です。この二つを混ぜないことが出発点です。
最初に、相手の経験を教えてもらう
着任直後から自分の方針だけを話すのではなく、相手がどの仕事に詳しく、どのような問題を見てきたかを聞きます。何を大切にしているか、どんな役割なら力を発揮できるか、過去にうまくいかなかったことは何かも確認します。
これは相手へ決定権を丸ごと渡すためではありません。判断に必要な情報を集め、経験を組織の力として生かすためです。
期待を曖昧にしない
遠慮して期待を伝えないと、相手は何を求められているのか分かりません。問題が起きた後で注意すれば、「最初に言ってほしかった」と感じます。
仕事の目的、期待する成果、期限、任せる範囲、途中で相談してほしいことを明確にします。年齢に関係なく、同じ職務には同じ基準を適用します。
意見が違った時に、役職で押し切らない
経験のある部下から、自分と異なる意見が出ることがあります。すぐに否定せず、どの事実や経験からそう考えたのかを聞きます。
そのうえで、組織の方針、顧客への影響、リスク、期限など、判断に使う基準を共有します。相手の案を採用しない時も、理由を説明します。
十分に意見を聞いた後、最終的に決める必要がある時は上司が決めます。相手の経験を尊重することと、決定責任を引き受けることは両立します。
高圧的に見せる必要はない
自信がない時ほど、役職を強く示したくなることがあります。しかし、声の大きさや命令の強さで上司らしさを作っても、長くは続きません。
分からないことは教えてもらい、判断すべきことは判断し、誤った時には修正する。約束したことを守り、相手によって態度を変えない。こうした行動の積み重ねが、役職ではなく信頼によるリーダーシップをつくります。
関係は、実際の対話の中でつくる
年上の部下との接し方に、すべての人へ通用する一つの正解はありません。本人の経験、性格、希望、仕事の状況を理解しながら、実際の対話を通じて調整します。
部下の年齢を気にするより、自分がどのような上司でありたいかを明確にし、一貫した基準で接することが大切です。
最初の一歩
年上の部下一人と時間を取り、「これまでの経験から頼りたいこと」「今後担いたい役割」「上司として期待する成果」「意見が異なる時にどう決めるか」を話してください。
敬意を持って聞き、責任を持って決める。この二つを同時に行うことが、年齢を越えた信頼関係の第一歩です。
編集注:本稿は2022年3月の個別相談をもとに、2026年に初任管理職向けの一般的な実践知として再構成しました。受講者、勤務先、部下の人数や年齢など、個人を特定できる情報は掲載していません。

