東京部長倶楽部の山木のぼるです。
部長になると、部下の前では迷いを見せてはいけない、どんな質問にも答えなければならないと思いがちです。しかし、知らないことまで知っているように振る舞うと、部下は異論や悪い情報を出しにくくなります。部長本人も、判断材料が不足したまま孤立します。
英雄型リーダーの限界
今回取り上げるHBR論文は、先の見えない状況では、弱さを見せず一人で組織を救う英雄型リーダーが機能しにくいと指摘します。必要なのは、人間としてメンバーとつながり、思考の癖に気づき、見方と行動を変えていくことです。
私は、人間らしさとは優しく振る舞うことでも、判断を部下へ丸投げすることでもないと考えます。部長は方向を示し、最終責任を負わなければなりません。そのうえで、自分に分からないことがあると認め、組織の知恵を借りるのです。
三つに分けて伝える
会議では、まず「確信していること」「まだ分からないこと」「皆から助けてほしいこと」を分けて伝えます。たとえば、守るべき顧客価値は確信している。しかし原因はまだ特定できていない。現場で起きている事実を教えてほしい。このように話せば、方向を失わずに異論を集められます。
反対に、部長が最初から完成した答えを示すと、会議は追認の場になります。専門家を集めても、持っている知識は使われません。
自己開示より、その後の行動
一度「私にも分からない」と言うだけでは信頼は生まれません。間違いに気づいたら訂正する。都合の悪い事実を伝えた人を責めない。集めた意見をどう判断に使ったかを返す。約束した支援を実行する。こうした行動の積み重ねが、人間らしさを信頼へ変えます。
弱さを見せることが目的ではありません。目的は、部長一人の能力を超えて、組織の知恵を成果へつなぐことです。人間らしい部長とは、迷いを隠さない人ではなく、迷いがある時にも方向と責任を手放さず、他者の力を引き出せる人だと思います。
方向を示すことと、答えを持つことは違う
方向を示すとは、今何を守り、何を優先し、いつまでに何を決めるかを明確にすることです。答えが未確定でも、判断の軸と次の確認時点は示せます。部長がこの二つを区別すれば、迷いを隠す必要も、責任を放棄する必要もありません。
方向と責任が明確であれば、部下は安心して不足情報や別案を持ち寄れます。
最初の一歩
次の会議で、一つの議題について「確信していること」「まだ分からないこと」「皆から助けてほしいこと」を書き出し、そのまま伝えてください。そして、出てきた異論に感謝し、次の判断へどう反映したかを必ず返しましょう。
編集注:本稿は、HBR論文「リーダーには英雄的な振る舞いではなく、人間らしさが求められている」(東京部長倶楽部で2023年2月1日共有)を手掛かりに、論文原文を転載せず、山木の実務経験と見解を中心に再構成したものです。

