東京部長倶楽部の山木のぼるです。
システム障害が起きると、「二度と起こさないように」という言葉が繰り返されます。再発防止は重要です。しかし、複雑なシステムと業務がつながるほど、すべての障害をゼロにする約束は現実的ではありません。必要なのは、予防と同時に、止まっても影響を広げず、早く戻せる組織をつくることです。
障害は、技術部門だけの問題ではない
いま、金融機関や取引所では、システム障害の早期検知と復旧を重視し、監視を強化する動きが報じられています。システム全体を見えるようにし、エラー分析へAIを使う検討も紹介されています。
ただし、監視技術だけでは顧客への影響を止められません。異常を誰が受け取り、どの水準で業務責任者へ知らせ、何を止め、何を続けるか。技術と業務の判断がつながって、初めて回復力になります。
「早く気づく」を具体化する
監視項目を増やすだけでは、警報の洪水になります。顧客や現場に大きな影響を与える兆候は何か、通常の揺らぎと異常をどう分けるか、誰が確認するかを決めます。そして、気づいた後に迷わないよう、連絡先と判断権限を明確にします。
部長が確認すべきなのは、技術的なエラー名より、「この異常が続くと、どの顧客、工程、数字に影響するか」です。影響を組織の言葉へ翻訳することが、優先順位を決めます。
止まった時の仕事を設計する
復旧までの間、業務をどう続けるか。紙や別システムへ切り替えるのか、受付だけを続けるのか、重要顧客を優先するのか。代替運用が決まっていても、誰も練習していなければ使えません。
平時に小さな訓練を行い、連絡網、判断、データの引き継ぎを試します。復旧目標も「できるだけ早く」ではなく、どの業務を何時間以内に戻すかまで決めます。全機能を同時に戻す必要はありません。顧客価値と安全性の高い順に戻します。
復旧後に、組織の前提を更新する
障害が収まると、通常業務へ急いで戻りたくなります。しかし、ここで事実を残さなければ同じ弱点が残ります。最初の兆候は何だったか。判断が遅れた理由は何か。代替手段は機能したか。顧客説明は届いたか。個人を責めるのではなく、仕組みと連携のどこが弱かったかを確認します。
AIや監視ツールは、異常の整理や傾向把握を支援できます。ただし、どの影響を優先し、どこまで止め、いつ顧客へ説明するかは、人が責任を持つ判断です。
障害を起こさない組織ではなく、起きた時にも信頼を失わず学べる組織へ。まず一つの重要業務について、止まった時の代替手段と復旧目標時間を確認してみてください。
参考:日本経済新聞『金融システム安定へ監視強化 銀行・取引所――障害の早期復旧に重点』2023年2月10日。

