謙虚さと共感力は、部長が責任を引き受けるための力である

謙虚さと共感力は、部長が責任を引き受けるための力である

 東京部長倶楽部の山木のぼるです。

 2022年6月、東京部長倶楽部のメンバーへ、Harvard Business Reviewの「これからのリーダーには謙虚さと共感力が求められる」を紹介しました。デジタル化、アジャイルな働き方、柔軟な勤務形態が広がる中で、上司が答えを持ち、部下を管理監督するだけのリーダーシップでは十分でないという問題提起です。

論文の要旨

 記事が紹介する特集には、大きく五つの論点があります。第一は、管理監督する上司から、部下の成長と成果を支えるコーチへの転換。第二は、権力が生みやすい傲慢さや自己注目を抑える謙虚さと共感力。第三は、異論を対立で終わらせず、深い議論へつなげる傾聴。第四は、将来像を描く役割と、実務を着実に進める役割を、一人へ押し込まずリーダーシップチームで担うこと。第五は、社員を起点に考えるピープルファーストの経営です。

 共通しているのは、人を指示の受け手として扱うのではなく、異なる知識や経験を持つ主体として組織の成果へ参加させることです。

謙虚さは、自信のなさではない

 謙虚なリーダーというと、強い意見を持たず、誰にでも合わせる人を想像するかもしれません。しかし、私が考える謙虚さは、自分の見方と専門性には限界があると認めることです。

 部長になれば、本人へ直接反対する人は減ります。過去に成功していれば、自分の判断が正しいという確信も強くなります。だからこそ、「自分が知らない事実は何か」「現場には別の見え方がないか」と、意識して情報を取りに行く必要があります。

共感は、相手の要求をすべて受け入れることではない

 共感とは、相手と同じ意見になることではありません。相手が置かれた状況、何を恐れ、何を大切にしているかを理解することです。

 部下が目標に反対している時、「やる気がない」と決めつける前に、必要な情報、能力、時間、他部門の協力が不足していないかを聞きます。背景を理解したうえで、目標を変えるのか、支援を増やすのか、役割を見直すのかを判断します。

聴くことと、決めることを分けない

 「皆の意見を尊重したい」と考えるあまり、結論を出さないリーダーもいます。しかし、話を聴くことと、判断責任を放棄することは違います。

 十分に聴いた後は、部長が何を重く見たのか、どの案を選ぶのか、どのリスクを引き受けるのかを示します。採用しなかった意見についても、なぜ採用しなかったかを説明します。

異論が出る仕組みをつくる

 会議で「何か反対意見はありますか」と聞くだけでは、異論は出にくいものです。部長が先に結論を示せば、参加者はその結論を補強する情報を探します。

 最初に現場の事実を話す人、顧客の立場から疑問を出す人、失敗条件を考える人を決めておく。若い人や専門家から先に話してもらう。部長は最後に意見を言う。このように、個人の勇気に頼らず、異論が情報として上がる順番と役割を設計します。

人を活かして、組織成果へつなげる

 謙虚さと共感力の目的は、職場の雰囲気を良くすることだけではありません。異なる専門性、現場情報、顧客の声を意思決定へ取り込み、組織としてより良い成果を出すことです。

 部長は、皆に好かれる人でも、すべてを知る人でもありません。自分の限界を認め、人の話を深く聴き、その知識を役割、支援、仕組みへ翻訳し、最後は自ら責任を持って決める人です。

最初の一歩

 次の会議では、部長が最初に結論を言う前に、その決定の影響を受ける現場の一人へ「私が見落としている事実は何ですか」と尋ねてください。聞いた内容に対し、何を判断へ取り入れ、何を取り入れなかったかまで返答しましょう。

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