部下を変える前に、自分の前提を疑う――リーダーの内省を行動へ変える

部下を変える前に、自分の前提を疑う――リーダーの内省を行動へ変える

東京部長倶楽部の山木のぼるです。

 「部下が変わらない」「上司が理解してくれない」「制度が悪い」。仕事が思うように進まない時、原因を自分の外側に探すのは自然なことです。実際、環境や相手に問題がある場合もあります。

 しかし、周囲を変えようとするほど、部長自身の内側にある問題は見えにくくなります。自分の恐れ、成功体験、守りたい立場、無意識の思い込みが、判断を狭め、相手の反応を生み出している可能性もあるからです。

リーダーの変革は、自分を知ることから始まる

 今回取り上げるHBR論文は、リーダーが変わるためには、外部環境への適応だけでなく、自分の内側にある固定観念や恐れ、習慣への自己認識が必要だと論じています。

 考えるべきなのは、「なぜ私は今のようなリーダーになったのか」「これからどのようなリーダーになれるのか」「それを妨げているものは何か」という問いです。

 これらは、自分の性格を分析して終わるための問いではありません。難しい判断や人間関係の停滞に直面した時、自分の反応がどこから来ているのかを理解し、別の行動を選べるようにするための問いです。

事実と、自分の意味づけを分ける

 例えば、会議で部下から反対意見が出なかったとします。「皆が方針を理解し、賛成した」と考えることもできます。一方で、「反論しても無駄だと思われている」「判断材料が不足している」「部長の顔色を見ている」という可能性もあります。

 起きた事実は「反対意見が出なかった」ことだけです。その事実へどのような意味をつけたかは、自分の解釈です。まず、この二つを分けます。

 次に、自分は何を守ろうとしていたのかを考えます。早く結論を出したかったのか、部長として迷っている姿を見せたくなかったのか、自分が立てた方針を否定されたくなかったのか。ここまで言葉にすると、別の進め方が見えてきます。

弱さを認めることと、責任を手放すことは違う

 「分からない」「私の見方に偏りがあるかもしれない」と認めると、リーダーとして弱く見えると心配する人もいます。しかし、弱さを認めることと、判断責任を放棄することは別です。

 分からないことを明らかにし、異なる意見を集め、そのうえで決める。決めた理由と見直す条件を説明する。この姿勢は、むしろ責任の取り方を明確にします。

 部長が自分の前提を問い直す姿を見せれば、部下も間違いや不安を隠さず話しやすくなります。内省は個人の心の問題にとどまらず、組織の信頼や情報の流れにも影響します。

内省を自責にしない

 注意したいのは、何でも自分の責任にしてしまうことです。市場環境、制度、資源不足、相手の行動など、自分では直接変えられない要因もあります。

 内省の目的は、自分を責めることではありません。環境の制約と、自分が選べる行動を分けることです。「すべて自分が悪い」でも「すべて相手が悪い」でもなく、自分が影響を与えられる部分を見つけます。

気づきを、周囲から見える変化にする

 「自分は結論を急ぎすぎていた」と気づいても、次の会議が同じ進め方なら、組織から見れば何も変わっていません。次回は判断前に反対意見を求める、議題を事前に共有する、部下の説明を最後まで聞くなど、観察できる行動へ変えます。

 そして、結果を確かめます。意見は増えたか、判断の質は上がったか、手戻りは減ったか。内省と行動と結果を往復して初めて、リーダーの成長が組織の変化へつながります。

自分に向けたい三つの問い

  • 私は、なぜ今のような判断をしたのでしょうか。
  • その判断で、何を守ろうとしていたのでしょうか。
  • 別の前提に立てば、どのような行動を選べるでしょうか。

最初の一歩

 最近、部下や関係者を変えたいと感じた場面を一つ選んでください。紙を四つに分け、「起きた事実」「自分の解釈」「失うのが怖かったもの」「次に変える行動」を書きます。最後に、信頼できる相手へ「私が見落としている点は何ですか」と尋ねてみましょう。

編集注:本稿は、HBR論文「自分自身に潜む問題の根源から目を逸らしてはいけない」を手掛かりに、論文原文を転載せず、部長の内省を行動と組織変化へつなげる観点から再構成したものです。

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