東京部長倶楽部の山木のぼるです。
職場で部門間の関係が悪くなると、「あの人は協力的ではない」「仕事を頼まれるのが嫌なのだ」と決めつけてしまいがちです。しかし、本当に仕事そのものを拒んでいるのでしょうか。
今回は、依頼側と業務支援側の歯車が外れかけたとき、ある管理職が対話と仕事の設計を見直し、関係を修復した実話をご紹介します。
「仕事が嫌なのではない」という本音
業務改善の一環として、一部の仕事を専門職から業務支援担当へ移していました。ところが、担当者の不満が強まり、管理職にも怒りが向けられるようになりました。
管理職が話を聞くと、担当者は仕事を拒んでいたわけではありません。「自分もチームの一員として取り組みたい。しかし、依頼の仕方が一方的で、何をどこまで行えばよいか分からず、時間も足りない」というのが本音でした。
表面に出た言葉だけを見れば「やりたくない」に聞こえます。けれど、その奥には、役に立ちたい気持ちと、うまくできない不安が同居していました。
最初に、反論せずに事情を聞く
管理職は、すぐに正しさを説明するのではなく、まず不満を聞きました。そして依頼側の態度や説明に配慮が足りなかった点を認め、必要な働きかけを行うと伝えました。
ここで大切なのは、どちらかを悪者にしなかったことです。依頼側にも忙しさや事情があります。一方、支援側にも、曖昧な依頼を抱えたまま仕事を進める難しさがあります。対立を人格の問題にせず、仕事の受け渡しにある問題として扱いました。
依頼内容を、簡単な文書にする
次に、口頭だけで頼む方法を改めました。目的、行ってほしいこと、期限、判断に迷ったときの相談先を、簡単な文書で示すようにしました。
細かな手順をすべて固定することが目的ではありません。依頼する側の頭の中にしかなかった前提を、受け取る側が確認できる形にすることが重要です。曖昧さを減らせば、担当者は自信を持って動けますし、手戻りも減ります。
感謝と共通目的を、言葉にする
さらに、仕事を渡して終わりにせず、協力への感謝を伝えることをルールにしました。
同時に、「誰かを楽にするための仕事移管ではない」と説明しました。専門職は、本来の仕事へ時間を振り向け、成果を出す責任があります。支援担当も、自らの専門性を生かしてチームへ貢献する。全員が共通の目標を達成するための役割分担だと、意味づけをそろえました。
仕事を渡した側の責任も確認する
支援側だけに協力を求めても、関係は改善しません。移管によって時間を得た依頼側が、その時間を本来の成果へ使っているかも確認しました。
仕事の移管は、負担を一方へ押しつけることではありません。役割ごとの専門性を生かし、チーム全体の成果を高めるための再設計です。依頼側にも成果責任があると明確にすることで、支援側の納得が生まれます。
本人は、ばらばらになりかけていた歯車を、まずは修復できたと振り返りました。人間関係の問題に見えても、聞き方、依頼方法、役割、目的を整えることで前進できる場合があります。
最初の一歩
部門間で摩擦が起きている仕事を一つ選び、受け取る側へ三つ質問してください。「仕事そのものが嫌なのか」「何が分からず困っているのか」「依頼側に何を変えてほしいのか」です。
その答えをもとに、目的、依頼内容、期限、相談先、依頼側が果たす成果責任を一枚に整理します。感謝を伝え、共通目的を確認するところまでが、仕事を頼むということです。
編集注:本記事は2022年の個別セッション記録をもとに、本人、勤務先、業界、組織名、職種等を特定できないよう匿名化・再構成しています。関係が完全に解決したことや、その後の業績向上を示すものではありません。

