仕事は資格ではなく、患者価値から組み直す――専門性を生かす役割分担

仕事は資格ではなく、患者価値から組み直す――専門性を生かす役割分担

東京部長倶楽部の山木のぼるです。

人手が足りないと聞くと、まず採用を増やそうと考えます。しかし、人数を増やす前に、今いる人が本来の専門性を発揮できているかを確かめる必要があります。高度な判断を担う人が、長年の慣行だけを理由に、他の人でもできる仕事へ多くの時間を使っていることは珍しくありません。

職種ではなく、届ける価値から見る

いま、医療・介護分野では業務分担を見直し、非効率を改善しようとする動きが報じられています。医療には、安全と資格に関わる厳格な境界が必要です。一方で、「これまでこの職種がしてきたから」という理由だけで仕事を固定すると、専門性の高い人が最も価値の高い判断へ集中できません。

部長が最初に見るべきは職種表ではなく、顧客や患者へ届ける価値です。その仕事は、誰のどの困りごとを解くのか。どの部分に専門資格や経験に基づく判断が必要か。どこは標準化でき、どこは他職種へ移せるか。何を連携しなければ安全を守れないか。ここから役割を組み直します。

分担変更は、仕事の押し付けではない

忙しい人の仕事を別の人へ移すだけでは、負担の移し替えになります。新たに担う人へ、目的、判断基準、教育、権限、相談先を渡さなければなりません。受け取る側の既存業務も減らし、全体の仕事量を見直す必要があります。

また、役割を渡す側には不安があります。品質は保てるのか、自分の専門性が軽く扱われないか。役割を受け取る側にも、責任だけ増えるのではないかという不安があります。したがって、変更の理由と期待する価値を共有し、小さな範囲で試し、事実を見ながら調整します。

専門性を薄めず、組み合わせる

組織として成果を上げるために必要なのは、全員を同じ仕事ができる人にすることではありません。異なる専門性を、目的に向けて正しく組み合わせることです。専門家には専門家にしかできない判断へ集中してもらい、周囲の人は標準化された仕事を担い、必要な情報を正確につなぐ。デジタルも、単に作業を置き換えるのではなく、この連携を支えるために使います。

部長は、職種の間を設計する

役割分担の見直しは、人事部や制度担当だけの仕事ではありません。実際の仕事がどこで滞り、誰の判断を待ち、どこに重複があるかを見られるのは、現場を率いる部長です。部門や職種の境界を越え、安全、品質、負担、育成を一緒に考える必要があります。

まず一つの業務を選び、「価値」「必要な専門判断」「標準化できる作業」「引き継ぐ情報」「例外時の相談先」に分けてみてください。人手不足という大きな問題が、役割設計という具体的な仕事へ変わります。

参考:日本経済新聞『薬剤師、看護の仕事も 医療の非効率を改善』2022年5月26日。

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