東京部長倶楽部の山木のぼるです。
休日にも携帯電話が鳴り、自分の承認待ちで案件が止まる。「自分がいなければ、この部署は回らない」と感じると、頼られている誇らしさもあるかもしれません。しかし、止まる仕事が多いほど、その人は組織の強みであると同時に、最大のボトルネックになっています。
自分への依存は、組織の強さではない
強い部長は、すべての答えを持つ人ではありません。自分が不在でも、組織が共通の目的と基準で判断し、異常な時には適切に支援を求め、結果から学べる状態をつくる人です。
それは部長の仕事をなくすことではありません。日常判断から離れ、将来の課題、人材、他部門との連携へ時間を使えるようにすることです。
止まる場所は、足りないものを教える
まず、自分が一日不在になった時に止まる仕事を挙げます。理由を「部下の能力不足」で終わらせず、情報が一人へ集中しているのか、判断基準がないのか、権限を渡していないのか、経験する機会がなかったのかに分けます。
足りないものが分かれば、「何かあったら電話して」よりよい対策が見えます。情報を共有し、判断例を説明し、小さな案件から任せられます。
権限委譲は、金額だけでは決まらない
「百万円までは決めてよい」という線だけでは、難しい判断は残ります。何を必ず守るのか、どのリスクなら相談するのか、どこまでは現場の裁量で試せるのか、判断後に何を記録するのかを決めます。
誤りをゼロにしようとすれば、部下は何も決められません。致命傷を避けられる範囲を明確にし、回復可能な判断を任せます。
残すのは、答えより考え方
手順書へ正解だけを書いても、想定外には対応できません。その判断で何を目的とし、どの事実を見て、どんな選択肢を比べ、何を理由に決めたのかを残します。
メンバーは、過去の結論をコピーするのではなく、似た状況で自分たちの答えをつくれるようになります。
失敗した仕事を、すぐ取り戻さない
初めて任せた判断が完璧でないのは当然です。そこで「やはり自分がやる」と仕事を取り戻せば、組織は再び部長待ちになります。
結果を、確認できた事実、判断時の前提、見落とした情報、次回の修正に分けて振り返り、同じ範囲をもう一度任せます。回復可能な失敗は、判断力を育てる授業料です。
最初の一歩
あなたが一日不在だった時に止まる仕事を三つ書いてください。原因を情報、基準、権限、経験に分け、最も小さく任せられる判断を一つ選びます。任せる前に守る条件と相談基準を確認し、終わった後に考え方を一緒に振り返ってください。
編集注:本稿は、会員向け『部長になろう』の後継者育成・権限委譲に関する実践知を、一般公開用として再構成したものです。

