東京部長倶楽部の山木のぼるです。
【分かったことと、できることの間には距離がある】
研修の直後、参加者は「よく分かりました」「明日から実践します」と答えます。ところが数週間後、仕事の進め方は元へ戻っています。上司は「危機感がない」「本人の意志が弱い」と考えがちです。しかし、知識を得たことと、忙しい現場で新しい行動を選び続けることは別の課題です。
【結論――人を責める前に、行動の仕組みを設計する】
行動が変わらない時は、本人の性格だけを見ず、目的、行動の大きさ、周囲の環境、支援、振り返りを点検します。部長の仕事は「変われ」と言うことではなく、望む行動が起きやすく、続きやすい条件をつくることです。
目的を本人の仕事へ結びつける
会社方針として重要でも、自分の仕事にどう関係するかが分からなければ動けません。「顧客の待ち時間を減らす」「手戻りをなくす」など、誰の何がよくなるのかを具体化します。目的が見えれば、決められた手順を守るだけでなく、状況に合わせて考えられます。
最初の行動を小さくする
「主体性を高める」「報連相を改善する」では大きすぎます。「会議の前日までに論点を一つ送る」「問題が起きたら三十分以内に事実だけ共有する」など、すぐ実行できる単位へ落とします。最初から完璧を求めず、試して学べる大きさにします。
古い行動を支える環境を変える
新しい方法を教えても、評価、会議、帳票が古い行動を求めていれば元へ戻ります。改善提案を求めながら失敗を厳しく責める、情報共有を求めながら個人成果だけを評価する、といった矛盾をなくします。必要な道具、時間、権限も確認します。
周囲の支援を決める
本人一人の努力にしません。最初の数回は上司が確認する、経験者を相談相手にする、チームで進捗を共有するなど、助けを求めやすい形をつくります。監視ではなく、詰まった時に早く支援するための確認です。
成功と失敗の両方を振り返る
できなかった理由だけでなく、できた時の条件を確認します。時間帯、相手、準備、使った資料など、再現できる要因を言葉にします。小さな成功を本人の能力として承認し、次の挑戦を少しだけ広げます。
管理職自身の行動も変える
部下へ新しい行動を求めながら、上司が従来どおりの指示や評価を続ければ、組織は変わりません。部長も、任せ方、問いかけ、会議の進め方を変え、その結果を部下と検証します。
行動変容は一度の決意ではなく、実行、結果、振り返り、再挑戦の循環です。続かないことを本人の弱さとして終わらせず、どの条件が行動を妨げたかを一緒に探す。その姿勢が、人を成長させ、改善が続く組織をつくります。
出典:IPイノベーションズ「行動変容を妨げる要因」(2021年5月8日参照)。本稿は同記事の論点を参考に、部長の実務向けに独自に再構成しました。

