東京部長倶楽部の山木のぼるです。
【退職の相談を受けてからでは遅い】
優秀な社員が辞めると、会社は給与、昇進、福利厚生などの条件を見直します。もちろん処遇は重要です。しかし、退職を決めた人へ条件を提示しても、すでに気持ちが離れていることがあります。日々の仕事で、期待されている実感がない、成長できない、意見を聞いてもらえないという経験が積み重なっているからです。
今回読んだMcKinsey & Companyの記事は、優秀な人材をつなぎ止めたいなら、よりよいリーダーになることを促しています。ここでいうリーダーシップは、魅力的な演説ではありません。部下が毎日経験する仕事、対話、判断の質です。
【結論――人は制度だけでなく、上司との関係を通じて組織を見る】
給与制度を変えるには時間がかかりますが、部長の行動は今日から変えられます。仕事の意味を伝え、成長機会をつくり、裁量と支援を渡し、貢献を具体的に認める。こうした積み重ねが、残りたい組織をつくります。
退職面談ではなく、在籍中の対話をする
「辞めるつもりはないか」と聞くだけでは本音は出ません。「今の仕事で続けたいことは何か」「変えられるなら何を変えたいか」「次にどんな力を身につけたいか」を定期的に聞きます。答えをすぐ約束できなくても、背景を理解し、一緒に選択肢を考えます。
仕事の意味を具体的に伝える
会社の理念を繰り返すだけでは不十分です。その人の判断や工夫が、顧客、同僚、事業へどう影響したかを伝えます。自分の仕事が誰の何を変えたかが見えると、日常の作業が目的へつながります。
成長機会を仕事の中につくる
研修だけが成長ではありません。少し難しい案件、他部門との協働、顧客への説明など、次の役割に必要な経験を計画的に渡します。丸投げせず、期待と権限、相談のタイミングを合意します。
優秀な人へ仕事を集中させない
頼れる人ほど案件が集まり、成果を出すほど負担が増えます。これは承認ではなく消耗です。業務を棚卸しし、他の人を育て、本人にしかできない仕事へ集中できるようにします。休むことを本人の自己管理だけにしてはいけません。
貢献を具体的に認める
「さすが」「助かった」だけでなく、どの行動が、誰に、どんな価値を生んだかを伝えます。結果だけでなく、周囲を支えた行動や学びを共有した行動も認めます。本人が自分の強みを理解できる承認にします。
管理職の質を組織課題として扱う
部下が辞めるたびに個別対応するのではなく、管理職の対話、任せ方、評価、育成を会社として高めます。部長自身も部下から意見を求め、上司としての行動を更新します。人材定着を人事部だけの責任にしてはいけません。
すべての退職を防ぐことはできません。新しい挑戦のための転職を応援すべき場合もあります。それでも、「この上司のもとでは成長できない」「自分の仕事に意味を感じない」という理由で人を失うことは減らせます。人をつなぎ止めるのではなく、人がここで力を発揮したいと思える組織をつくる。それが部長の仕事です。
出典:McKinsey & Company “Do you want to retain top talent? Be a better leader”(McKinsey & Company, “Do you want to retain top talent? Be a better leader,” April 10, 2022)。本稿は同記事の問題提起を参考に独自に再構成しました。

