東京部長倶楽部の山木のぼるです。
2022年4月、東京部長倶楽部のメンバーへ、Harvard Business Reviewの「あなたが自分のキャリアコーチに変わるための3つのスキル」を紹介しました。将来を見通しにくい時代に、上司や会社から答えを与えられるのを待つだけでなく、自分自身へ問いを投げかけ、行動を起こすためのセルフコーチングを扱った論文です。
論文の要旨
論文が挙げる第一の力は、自己認識です。自分が何を感じ、何を避け、周囲からどう見えている可能性があるかを捉えます。第二は、よい質問をする力です。答えを「はい・いいえ」に限定しない開かれた問い、自分が変えられることへ焦点を当てる問い、一度に一つだけ考える問いが重要だと説明します。第三は、自分の声を聴くことです。気を散らすものから離れ、親しい友人に接するように、自分の考えや感情を丁寧に聴きます。
同時に論文は、セルフコーチングが、上司、同僚、メンターとの対話に代わるものではないとしています。自分の論点を整理してから他者と話すことで、対話をより有益にする力でもあります。ここまでが論文から受け取った要旨です。
一人で正解を出すことではない
私がこの論文を読んで感じたのは、セルフコーチングとは、自分だけで正解を出すことではない、ということです。仕事やキャリアの問題には、自分一人では見えない事実があります。関係者の意見、会社の方針、顧客の反応、専門家の知識を借りる必要もあります。
それでも、何が問題なのか、何を恐れているのか、どこまで自分で変えられるのかを整理せずに相談すると、相手から答えをもらうだけになります。セルフコーチングは、他者の知恵を借りる前に、自分が向き合うべき問いを明らかにする準備です。
自分との対話は、予定しなければ起きない
自分との対話は、いつでもできるように思えます。しかし、忙しい時ほど、目の前の連絡、会議、締切に流されます。「落ち着いたら考えよう」と思っているうちに、重要な問題ほど後回しになります。
月末の振り返り、目標設定、1on1の前、重要な会議の前後など、もともと存在する節目へ短い内省時間を入れます。毎回長い時間を取る必要はありません。5分でも、問いを決めて書けば、考えは前へ進みます。
問いの主語を自分へ戻す
悩んでいる時には、「なぜ上司は分かってくれないのか」「なぜ部下は動かないのか」という問いが浮かびます。相手の問題を考えることは必要ですが、それだけでは自分の行動は変わりません。
「私は何を十分に説明していないのか」「私は何を確認できるのか」「私は次に何を試すのか」と、問いの主語を自分へ戻します。これは、すべてを自分の責任にすることではありません。自分が動かせる範囲を見つけ、行動を止めないためです。
部長は、部下の問いを育てる
部長にとって、セルフコーチングは自分のためだけのものではありません。部下から相談を受けた時、すぐに答えを示せば、その場では早く解決します。しかし、毎回答えを与えると、本人は上司の判断を待つようになります。
「あなたは何が事実だと見ていますか」「何を変えたいですか」「選択肢は何がありますか」「最初に何を試しますか」と問い、本人が考えるのを支えます。必要な場面では部長が判断しますが、その前に、本人が自分で論点を捉える機会を残します。
最初の一歩
次の1on1や月次レビューの前に5分だけ時間を取り、「事実は何か」「私は何をコントロールできるか」「次に取る一つの行動は何か」を書いてください。答えが完全でなくても構いません。問いと次の一歩が明らかになれば、他者との対話も、行動の質も変わり始めます。

