東京部長倶楽部の山木のぼるです。
「この仕事は君に任せた」。そう言われた部下が、期待どおりに動けないことがあります。本人の力不足と決めつける前に、渡し方を確認する必要があります。任せたつもりが、実際には丸投げになっていることがあるからです。
丸投げは、判断材料まで手放す
丸投げでは、仕事の背景も期待する成果も曖昧なまま、「とにかくやっておいて」と渡します。受け手は何を優先するか分からず、過去の資料や上司の表情から正解を推測します。途中で確認すれば「自分で考えろ」と言われ、最後に出せば「なぜ相談しなかった」と言われる。これでは主体性は育ちません。
任せる時に共有する五つのこと
第一は目的です。なぜこの仕事が必要で、顧客や組織の何につながるのか。第二は期待する成果です。完成の状態、期限、品質を明らかにします。第三は裁量です。本人が決めてよい範囲を伝えます。第四は境界です。予算、安全、法令、他部門との約束など、越えてはいけない線を示します。第五は支援です。どの段階で相談し、上司が何を助けるかを決めます。
ここまで共有したうえで、具体的な進め方は本人に考えてもらいます。方法まで上司が決めれば、作業の代行になり、判断力は育ちません。
途中確認は監視ではない
任せた後に放置することも丸投げです。一方、毎日細部を確認すると、本人は上司の承認を待つようになります。大切なのは、リスクに応じて確認点を設けることです。
初めての仕事なら早い段階で方向を確認し、慣れた仕事なら節目だけを見る。確認では「予定どおりか」だけでなく、「何が分かったか」「次にどの判断が必要か」「支援が必要か」を話します。上司が答えを与える場ではなく、本人の考えを確かめる場にします。
失敗できる範囲をつくる
育成には、本人が判断し、結果から学ぶ経験が必要です。ただし、会社や顧客に重大な損害が出る領域まで無条件に任せてはいけません。部長は、試せる範囲と止める条件を設計します。小さく任せ、振り返り、次の裁量を広げる。この積み重ねが権限委譲です。
今週、部下へ渡す仕事を一つ選び、目的、成果、裁量、境界、支援を書き出してください。「任せる」は、仕事を手放すことではありません。本人が判断できる状態をつくり、成長と成果の両方に責任を持つことです。
参考:「グロースハッカー目指してみる」掲載『「丸投げ」と「任せる」の違い』。本記事は同記事の問題提起を参考に、部長の実務として独自に再構成しています。

