東京部長倶楽部の山木のぼるです。
個別セッションで、部下の仕事へどこまで介在すべきかという相談を受けました。本稿では、本人や勤務先が特定されないよう、状況を一般化して再構成しています。
匿名化した相談
「部下から、会議や顧客訪問の報告を受けています。しかし、私が知りたい情報が入っておらず、後から何度も聞き直すことになります。必要な項目を決めた報告の型をつくれば効率的だと思う一方、そこまで指示すると細かく介入しすぎるのではないかと迷っています」
この相談に対して、私は、必要な情報を明確に伝えることは上司の仕事だと答えました。自分の期待を言葉にせず、部下に察してもらおうとする方が、部下へ大きな負担をかけるからです。
「分かっているはず」は、上司側の思い込み
上司は、同じ仕事を長く経験し、報告を受けた後に何を判断するかも知っています。そのため、「この状況なら、この情報が必要だと分かるはずだ」と考えがちです。
しかし部下には、上司の頭の中にある判断の流れが見えません。必要な情報をすべて推測しようとすれば、過剰に資料をつくるか、逆に重要な情報を落とすことになります。察する力を評価する前に、上司が判断に必要な情報を説明したかを確認する必要があります。
情報の型は、監視ではなく接続の仕組み
報告の型をつくる目的は、部下の行動を細かく監視することではありません。現場で起きたことと、上司が行う判断を接続することです。
例えば顧客訪問なら、訪問回数や会話内容をすべて書かせるのではなく、「顧客の目的」「現在の課題」「相手が示した反応」「次の行動」「上司の判断や支援が必要な点」をそろえます。何の判断にも使わない情報まで集めると、型は単なる作業になります。
型を示すことと、方法を奪うことは違う
上司が示すべきなのは、目的、必要な情報、守るべき条件、相談が必要な境界です。その範囲内で、部下がどのように情報を集め、仕事を進めるかには裁量を残します。
報告書の書き方を一字一句指定すれば細かな管理になります。一方、判断に必要な情報と理由を示し、本人が考えて記入できる余地を残せば、型は自律を支える道具になります。
型は、部下と一緒に改善する
最初につくった型が最適とは限りません。「この項目は何の役に立ったか」「書きにくかったところはどこか」「この報告によって上司の判断は早くなったか」を部下と振り返り、型を更新します。
報告した後の反応までが仕組み
部下に報告させても、上司が読まず、判断も支援もしなければ、やがて内容は形骸化します。報告を受けたら、何を判断したか、どの支援を行うか、何は現場へ任せるかを返します。
よくない情報を早く報告した人が責められるなら、次から問題は隠されます。事実を早く共有したことは認め、原因と次の行動を一緒に考えます。
最初の一歩
繰り返し説明不足が起きている報告を一つ選び、「この報告で何を判断するのか」「判断に必要な情報は何か」「例外時に相談する条件は何か」を一枚にしてください。部下に記入を求める前に、なぜ必要なのかを説明し、使った後に不要な項目を一つ減らしてみましょう。

