モチベーションが高い今こそ、理由を言葉にする――新しい仕事を一過性の高揚で終わらせない

モチベーションが高い今こそ、理由を言葉にする――新しい仕事を一過性の高揚で終わらせない

東京部長倶楽部の山木のぼるです。

 「最近、仕事への意欲が高い」と感じる時、その状態を喜ぶだけで終えていないでしょうか。モチベーションは、下がってから対策を考えるものと思われがちです。しかし、高い時にこそ、その理由を言葉にしておく価値があります。

 ある技術者は、春に専門業務へ戻り、半年ほどたった時点でも高い意欲を持って働けていると振り返りました。それまでは過去の案件の残務が中心でしたが、これから新しいプロジェクトの立ち上げに関わり、他拠点のメンバーと仕事を進めるリード役を担う予定でした。新しい仕事の成果はまだ確認できません。それでも、本人が「今は意欲が高い」と自覚した事実は、仕事の設計を考える大切な材料です。

モチベーションを性格の問題にしない

 意欲が高い人を「前向きな人」、低い人を「やる気のない人」と分けると、上司が変えられる条件を見落とします。同じ人でも、仕事の内容、裁量、周囲との関係、成長の実感が変われば、状態は変わります。

 この事例では、過去の案件を片づける仕事から、新しい仕事を立ち上げる役割へ移ろうとしていました。専門性を使えること、未知の課題があること、他者を動かす責任が増えることなど、複数の条件が重なっていたと考えられます。ただし、どの条件が決定的だったかは、本人との対話なしには決められません。

高い時に「なぜ」を残す

 意欲が下がった後で、「前はなぜ元気だったのか」を思い出すのは難しいものです。高い時に、最近楽しめた仕事、時間を忘れた場面、難しくても続けられた理由、誰との関係が支えになったかを記録します。

 そこで見つけたいのは、気分を再現する魔法ではありません。本人が力を出しやすい仕事の条件です。新規性に動かされる人もいれば、専門性を深めること、顧客から反応を得ること、誰かの成長を支えることに力が出る人もいます。

新しい仕事の高揚を、持続する仕組みに変える

 立ち上げ時には、期待と緊張から自然に意欲が高まります。しかし、役割が曖昧なまま負担だけが増えたり、日常業務に追われて成果が見えなくなったりすれば、高揚は長く続きません。

 上司は、何を任せるのか、どこまで本人が決めてよいのか、誰が支援するのか、何をもって前進と見るのかを確かめます。小さな節目を置き、結果だけでなく、学んだこと、築いた関係、改善した仕組みも振り返ります。挑戦を与えるだけでなく、挑戦が成長として見えるようにするのです。

本人の「やりたい」と組織の「やるべき」をつなぐ

 やりたい仕事だけを割り当てることはできません。組織には期限も制約もあります。一方で、「会社が必要としているから」とだけ説明すれば、本人は交換可能な作業者のように感じます。

 組織が必要とする成果、その人の強み、本人が伸ばしたい力を並べ、接点を探します。今回の役割で何を期待するか、それが次の成長へどうつながるかを言葉にする。完全に一致しなくても、自分の挑戦として引き受けられる余地が生まれます。

高い意欲を、周囲への無理に変えない

 本人の意欲が高いほど、抱え込みや働き過ぎ、周囲への過大な期待が起きることもあります。リード役なら、自分が走るだけでなく、メンバーが理解し参加できる速度をつくらなければなりません。

 部長は、熱意を称えるだけでなく、仕事量、権限、支援、休息を確認します。高い意欲を長く生かすために、個人の頑張りをチームの進め方へ変える視点が必要です。

最初の一歩

 この一か月で最も意欲が高かった場面を一つ選び、「取り組んでいた課題」「使えた強み」「任されていた範囲」「関わった人」「得られた反応」「次に伸ばしたい力」を書いてください。上司と本人で見比べ、次の仕事に残したい条件を一つ決めます。意欲が下がるのを待たず、高い時の事実から仕事を設計する。それが最初の一歩です。

編集注:本稿は2025年の個別セッション記録をもとに、本人、勤務先、製品、案件、拠点、役職を特定できないよう匿名化・再構成しています。継続的な意欲やプロジェクト成果は断定していません。

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