東京部長倶楽部の山木のぼるです。
人事評価のやり方には、さまざまなものがあります。目標管理、コンピテンシー評価、360度評価。評価尺度や制度を見直すたびに、「これで公平な評価ができる」と期待したくなります。
けれども、制度がどれほど精緻でも、評価面談がうまくいったかどうかは、もっと素朴なところに表れます。面談を終えた本人が、心から「わかりました。それでは、次も頑張ります」と言えるかどうかです。
「納得」と「同意」は違う
ここでいう「わかりました」は、上司の評価に全面的に同意することではありません。期待した評価を得られず、悔しさが残ることもあります。上司と本人で、成果の見方が異なることもあります。
それでも、どの事実をもとに評価されたのか、自分に何が期待されているのか、次に何へ取り組めばよいのかが理解できれば、人は前を向くことができます。
反対に、高い点数を伝えても、理由が曖昧で、次に何を伸ばすのかがわからなければ、面談は単なる結果通知で終わります。評価面談の目的は、点数を伝えることではありません。これまでの仕事を振り返り、次の成長と行動を合意することです。
評価面談で確認したい三つのこと
第一は、事実です。
「頑張っていた」「期待に足りなかった」という印象だけでは、対話はかみ合いません。どの仕事で、どのような行動を取り、どんな結果や影響があったのか。事実と解釈を分けて話す必要があります。
第二は、期待です。
部下に求めることを、評価の場で初めて伝えてはいけません。期初に役割と期待をすり合わせ、仕事の途中でも対話し、必要な支援をする。評価は一年に一度の儀式ではなく、日常のマネジメントの総括です。
第三は、次の行動です。
上司が一方的に「次はこれをやりなさい」と決めるだけでは不十分です。本人が、自分の言葉で「次は何に取り組むか」「そのために何を変えるか」を話せるところまで対話する。それが、評価を成長へつなぐ重要な一歩です。
面談当日に「初耳」をつくらない
もう一つ、大切なことがあります。低い評価や改善要求を、期末の面談で初めて伝えてはいけません。本人にとって「初耳」なら、上司が日常の観察と対話を怠っていた可能性があります。
仕事の途中で事実を共有し、期待との違いを伝え、修正する機会と支援を用意する。本人が軌道を戻せる時期に話してこそ、評価は育成になります。期末面談は驚かせる場ではなく、年間の対話を振り返り、次の約束を確認する場であるべきです。
厳しい評価ほど、対話の質が問われる
評価が低い時に、耳当たりのよい言葉だけで終わらせるのは、本人のためになりません。一方で、数字や制度を盾にして突き放すのも違います。
上司がすべきことは、厳しい事実も誠実に伝えたうえで、本人の認識を聞き、期待する変化を具体化し、必要な支援を約束することです。納得とは、上司の結論に従わせることではありません。違いが残っていても、判断の根拠を理解し、次へ進める状態をつくることです。
そのためには、上司が日々の出来事を記録し、面談前に確認すべき事実を整理しておくことが欠かせません。しかし、記録を点数づけの材料だけにしてはいけません。本人が何を考え、どこで力を発揮し、どの支援が必要なのかは、対話を通して確かめるものです。評価の意味を伝え、信頼をつくるのは上司の仕事です。
次の評価面談では、最後に一つだけ尋ねてみてください。
「今日の話を踏まえて、あなたは次に何へ取り組みますか」
本人が自分の言葉で答えられた時、評価面談は結果通知から、次の成果を生み出す対話へ変わります。
編集注:本記事は、2017年3月に山木のぼるが作成した「人事評価の目的」という短いメモをもとに、2026年10月、現在の考え方を加えて再構成したものです。

