東京部長倶楽部の山木のぼるです。
初めて部長になった時、多くの人は「早く成果を出さなければ」と考えます。課長時代に成果を上げてきた人ほど、自分で問題を見つけ、自分のやり方で直したくなるものです。
しかし、部長になった最初の一週間で大切なのは、目立つ改革を打ち出すことではありません。組織を理解するための対話と、動くべきこと、まだ動かないことを見分ける土台をつくることです。
新任リーダーには、二つの落とし穴があります。
一つは、組織の背景を理解する前に、何でも変えてしまうこと。もう一つは、慎重になるあまり、いつまでも何も変えないことです。
早すぎる改革も、遅すぎる無策も、組織の信頼を損ないます。
最初に「対話の予定」を示す
就任したら、まず上司と部下に、これからどのように話を聞き、何を確認していくかを伝えます。
誰と、いつ、何について話すのか。直属の部下だけでなく、組織の仕事を支える人や、他部門の重要な関係者とも、早い段階で対話する機会を設計します。
大切なのは、最初から答えを持っているように振る舞うことではありません。「私は皆さんの仕事を理解したい。そのうえで、何を守り、何を変えるかを一緒に考えたい」と明らかにすることです。
一週間ですべてを理解することはできません。しかし、話を聞く順序と姿勢を示すことはできます。それだけでも、周囲の不安は大きく変わります。
初日から動くこと、観察することを分ける
緊急で、しかも重要な問題には、初日から対応しなければなりません。安全、品質、顧客への重大な影響など、待つこと自体が危険になる問題です。
同時に、緊急ではないけれど重要な課題も、初日から認識しておく必要があります。人材育成、業務の仕組み、部門間の連携、将来に必要な能力などです。すぐに結論を出す必要はありませんが、見えないままにしてはいけません。
一方、背景を理解しなければ判断できないことは、急いで変えません。長く続いている手順や会議にも、現在の形になった理由があります。非効率に見えても、別のリスクを抑える役割を持っているかもしれません。
数字は、条件を確かめてから使う
新しい組織へ行くと、工数、品質、売上、生産性など、多くのデータが出てきます。数字があるからといって、そのまま正しい判断ができるとは限りません。
どのような条件で集められたのか。定義は統一されているか。欠けているデータはないか。現場の人はその数字をどう見ているか。
数字を疑うのではなく、数字が表しているものを正しく理解するのです。部長がデータを評価の武器として使う前に、共通言語として使える状態をつくることが重要です。
課題を五つから十に絞り、上司と合わせる
話を聞き、現場を見て、データの条件を確認したら、取り組むべき課題をいったん五つから十程度に整理します。最初から完璧な一覧にする必要はありません。
その課題を、重要度と緊急度、大局への貢献、影響の大きさなどから見直し、上司とすり合わせます。部長の仕事は、自分だけで優先順位を決めることではありません。会社の方針と現場の事実をつなぎ、限られた人と時間をどこへ配分するかを決めることです。
また、部下の「やりたいこと」「やるべきこと」「やれること」がどこで重なるかを見ることも欠かせません。新任部長が一人で改革を進めるのではなく、組織の力が動き出す条件を整える必要があるからです。
最初の一週間に、すべての問題を解決する必要はありません。
まず、上司、直属の部下、重要な関係者を書き出し、「誰と、いつ、何を確認するか」という対話の地図をつくってください。
新任部長の最初の成果は、大きな改革ではありません。組織を理解し、信頼を築き、正しい課題へ向かうための土台をつくることです。
編集注:本記事は、2018年3月から4月に行った新任部長との個別対話メモを、人物・企業・組織を特定できないよう完全に匿名化し、2026年10月に一般公開用として再構成したものです。

