東京部長倶楽部の山木のぼるです。
会社の中では、役職、勤続年数、担当製品で自分を説明できます。しかし、別の会社の人に同じ説明をしても、自分が何をできる人なのかは十分に伝わりません。市場価値を考えるとは、すぐに転職することではなく、組織の外から見ても再現できる価値を言葉にすることです。
転職活動を、結果だけで見ない
今回のHBR論文は、転職活動を採用されるか否かの一度の勝負ではなく、自分で管理できる小さな行動に分けて進める方法を示しています。希望と譲れない条件を整理し、経験を言語化し、人とのつながりを広げ、応募先を調べ、面接後に振り返る。結果だけでなく、学びと前進を測る考え方です。
この視点は、転職を考えていない人にも役立ちます。私自身、52歳で初めて転職する時、役職名ではなく、どのような課題を、誰と、どう解き、その経験が別の組織でどう役立つかを説明する必要がありました。
成果を四つの要素で棚卸しする
最近の仕事を一つ選び、「解いた課題」「一緒に動いた人」「生み出した変化」「次でも使える学び」に分けます。社内略語や固有名詞を外し、別の業界の人にも伝わる言葉にします。
たとえば「○○部長として制度を導入した」ではなく、「部門をまたぐ情報の断絶を特定し、関係者と判断基準をそろえ、手戻りを減らした」と説明します。すると、自分の価値が肩書ではなく、問題解決と協働の能力として見えてきます。
部下の選択肢も広げる
部長は、自分のキャリアだけでなく、部下が社外でも通用する力を得ているかを考える立場です。退職を防ぐことだけを目的にすると、キャリア面談は引き留めになります。本人が何を学び、どんな責任を担い、次にどの経験が必要かを話せば、現在の仕事を成長の機会へ変えられます。
選択肢のある人が会社へ残るのは、囲い込まれているからではありません。ここで働くことが成長と価値提供につながると納得しているからです。
キャリアを小さな行動にする
将来像が曖昧でも、経験者に話を聞く、必要な能力を調べる、社内で一つ新しい役割を引き受けるなど、次の行動は決められます。採用結果や昇進のように自分だけでは決められないものではなく、自分で管理できる行動を積み上げます。
市場価値は、他者が安心して任せられるかで決まる
能力を自分で語るだけでなく、誰と協働し、どの責任を果たし、どんな人から推薦されるかも大切です。経験を言葉にすると同時に、日々の約束と成果によって信頼を積み上げます。
最初の一歩
最近の成果を一つ選び、役職名と社内固有語を使わず、「どんな課題を、誰と、どう解き、何を学んだか」を200字で書いてください。言葉にしにくい部分が、次に経験を補うべきところです。
編集注:本稿は、HBR論文「転職活動の成功に向けて着実に前進する方法」(東京部長倶楽部で2023年5月9日共有)を手掛かりに、論文原文を転載せず、山木自身の転職経験と管理職の育成責任を中心に再構成したものです。

