部門目標は、上から降りてくるのを待ってはいけない

部門目標は、上から降りてくるのを待ってはいけない

東京部長倶楽部の山木のぼるです。

 部門の年度目標は、どのように決まっているでしょうか。

 会社の方針が決まり、それが本部、部、課へと順番に下りてくる。あるいは、各部門が次年度の計画を作り、それを全社で調整したうえで、最終目標として戻してくる。多くの会社では、この二つが組み合わされています。

 ところが、目標が正式に示されてから、「この数字を達成してください」と部内へ伝えるだけになっている部長も少なくありません。

 それでは、部長が目標設定に関わっているとは言えません。

 部長は、経営の言葉を現場の仕事へ翻訳し、現場の事実を経営の判断へ戻す立場です。部門目標は、上から降りてくるのを待つものではなく、その往復の中でつくるものです。

会社方針を、そのまま部門目標にしない

 例えば、会社が「収益性を高める」「成長分野へ集中する」「生産性を向上する」という方針を示したとします。

 その言葉を、そのまま部門目標へ書き写しても、現場は動けません。

 自分の部門は、会社の収益構造のどこを担っているのか。顧客にどんな価値を提供しているのか。何を変えれば、全社の成果に最も貢献できるのか。部長は会社の大局を読み、自部署が担う小局へ翻訳する必要があります。

 売上、利益、生産性といった数値目標は重要です。しかし、数字だけでは十分ではありません。新しい業務プロセスを定着させる、製品やサービスの競争力を高める、必要な人材を育てる、部門間の連携を改善する。こうした非数値の目標も、将来の成果をつくります。

 数値目標と非数値目標を別々に並べるのではなく、「何を変えることが、どの成果につながるのか」を一本の線で結ぶことが大切です。

現場の事実を上へ戻す

 トップダウンは、経営が決め、現場が従うだけの仕組みではありません。

 現場には、経営からは見えにくい事実があります。顧客の変化、設備や人材の制約、業務上のボトルネック、現場で生まれた新しい可能性。これらを部門の事情として抱え込まず、経営が判断できる形へ整理して戻すことも、部長の仕事です。

 「この目標は無理です」と言うだけでは、前向きな提案にはなりません。

 現在の事実は何か。何を変えれば実現可能性が上がるのか。人、予算、時間をどこへ配分すべきか。別の選択肢はあるか。部長は、現場の声を経営の言葉へ翻訳して提案します。

 この往復があるからこそ、会社方針は現場から離れた掛け声にならず、部門目標も自部署だけの都合に閉じなくなります。

目標が決まる前に関わる

 部長として問いたいのは、目標の数字が高いか低いかだけではありません。

 その目標が、どのような前提で決められたのか。立案段階で、必要な現場情報を提供できたか。関係部門と役割を調整したか。目標を実行するための能力や仕組みがあるか。

 もし、これまで全社の目標設定プロセスに関わっていないのであれば、その理由を考えてみてください。

 情報を求めていなかったのか。自部署の課題を説明できていなかったのか。上司との対話が目標決定後に限られていたのか。あるいは、部門の数字だけを見て、会社全体への貢献を言葉にできていなかったのか。

 目標が決まってから反応するのでは遅いのです。部長は、方針を決める人と、実行する現場の間に立ち、立案、調整、実行、見直しのすべてに関わります。

 会社の中期計画、年度方針、部門実績、現場から上がる課題を並べて確認すると、計画同士の食い違いや、見落としていた前提が見えてきます。資料を読むだけで終わらず、関係者と事実を照合し、複数の選択肢を比較することが大切です。しかし、自部署が何を引き受けるのか、その意味を部下へどう伝えるのか、最終的にどの資源を配分するのかは、部長が責任を持って判断しなければなりません。

 まずは、会社方針を一つ選び、二つのことを書いてみてください。

 「自部署は、どんな成果で貢献するのか」

 「経営へ戻すべき現場の事実は何か」

 この二つを往復させるところから、部門目標は「与えられた数字」ではなく、組織を動かす約束へ変わります。

編集注:本記事は、2017年4月に山木のぼるが作成した「目標設定について」という下書きをもとに、2026年10月、現在の「大局と小局を往復させる」という考え方を加えて再構成したものです。

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