東京部長倶楽部の山木のぼるです。
組織に問題が起きると、役割を明確にし、手順を増やし、報告経路を整えます。必要な対応です。しかし、すべてを決めれば組織がうまく動くとは限りません。整えすぎた組織では、人が自分の担当範囲だけを守り、境界で起きた問題を誰も拾わなくなることがあります。
ヘンリー・ミンツバーグは、優れたマネジャーが上から完全な秩序を押し付けるのではなく、現場の人々がつながり、共同体として動く状態を育てる重要性を論じています。ここでいう「無秩序」は、放任や混乱を勧める言葉ではありません。生きた組織には、命令だけでは説明できない自発的な調整が必要だという指摘です。
組織図だけでは、仕事はつながらない
組織図は責任の所在を示します。しかし、顧客の問題は組織図に沿って起きるわけではありません。開発、営業、製造、サービスの間をまたぎます。各部門が自分の指標だけを達成しても、全体では遅れや手戻りが起きます。
部長は、境界で何が起きているかを見ます。誰が誰を待っているか。どの情報が途中で失われるか。正式な会議ではなく、日常のどの対話が仕事を支えているか。組織をつなぐ実際の関係は、箱と線だけでは見えません。
余白は、無責任な自由ではない
人が自分で調整するには、何を守るべきかが分かっている必要があります。顧客価値、安全、品質、期限、倫理など、越えてはいけない境界を明確にします。その範囲の中で、誰に相談し、どう協力し、どの方法を選ぶかは現場へ任せます。
手順から外れるたびに上司の承認を待つ組織では、変化へ対応できません。一方、目的も境界も示さず「自律的に動け」と言えば放任になります。部長の仕事は、細部を全部決めることではなく、自律が成立する条件を整えることです。
現場へ関わるが、答えを奪わない
部長は現場から離れてはいけません。数字や報告だけでなく、実際の会話、困りごと、仕事の流れに触れます。ただし、自分が一番詳しい人として答えを出し続けるのでもありません。
「誰とつながれば解けるか」「何の目的が食い違っているか」「どの判断を現場へ渡せるか」を問い、人と人をつなぎます。必要な時には障害を取り除き、学びを他の部門へ広げます。
共同体は、共通の仕事から生まれる
懇親会を増やすだけで、共同体は生まれません。異なる専門性の人が、共通の顧客課題を一緒に解き、互いの判断を理解する経験が必要です。小さな横断課題を選び、短い期間で協働し、結果だけでなく連携の仕方も振り返ります。
ここでの焦点は、リーダーとマネジャーの役割論そのものではなく、部長が秩序を作り込みすぎず、組織の内側から生まれるつながりを育てることです。まず、最近の部門間問題を一つ選び、ルール不足ではなく、誰と誰の対話が不足していたかを確認してみてください。
参考:ヘンリー・ミンツバーグ『優れたマネジャーは無秩序な組織をつくる』DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー、2024年6月5日。

