東京部長倶楽部の山木のぼるです。
2022年9月、東京部長倶楽部のメンバーへ、Harvard Business Reviewの「中間管理職は上司と部下で矛盾する要求にどう対処すべきか」を紹介しました。上位者からは業績を上げるよう求められ、部下からは負担への理解や支援を求められる。その間に立つ管理職が、成果とケアをどう両立するかを扱った論文です。
論文の要旨
論文は、中間管理職が矛盾した要求の間で消耗する問題を、本人の我慢だけで解決してはいけないと指摘します。現場の負担を、データや直接の接点を通じて上位者へ伝え、思いやりが長期的な成果を支える条件であると説明し、責任を上へ分担する必要があります。
また、支援を中間管理職一人へ集中させず、部下同士、他部門、社内外の支援をつなぐこと、厳しい要求の背景を部下へ説明すること、自分自身の回復を確保することも重要だと論じます。
「中間」にいるのは課長だけではない
この論文を読み、私は、中間管理職の問題は課長だけのものではないと感じました。部長も、経営と現場の間にいます。さらに、部長は課長という中間管理職を通じて組織を動かします。
上位者から目標を受け取り、課長へそのまま伝えるだけでは、部長は伝言役です。反対に、現場の苦しさをすべて自分が吸収し、経営へ伝えなければ、本人が疲弊し、必要な意思決定も行われません。
圧力をそのまま流さず、意味へ翻訳する
部長は、上からの要求について、何が目的で、何が変えられない条件なのかを確認します。そのうえで、現場が理解できる言葉へ翻訳します。数字だけを示すのではなく、顧客、事業、会社全体にとってなぜ必要なのかを説明します。
同時に、仕事量、期限、優先順位、役割分担、支援方法など、変えられる条件を現場と一緒に考えます。
苦しさをそのまま抱えず、事実として上へ返す
「現場が大変です」と感情だけで上申すると、上位者は何を判断すべきか分かりません。残業、品質、欠員、離職兆候、顧客への影響、手戻り、対応の遅れなど、負担が成果へ与える影響を事実で示します。
そして、「この優先順位を変えてほしい」「この人員と権限が必要だ」「この期限なら品質を守れる」という判断の選択肢を示します。
思いやりを、個人の優しさで終わらせない
現場に思いやりのある課長ほど、部下の悩みを自分で抱え、仕事を引き取り、疲弊することがあります。部長は、課長の人柄だけに頼らず、相談経路、業務を分担できる相手、繁忙時に止める仕事など、支援の仕組みをつくります。
成果とケアは対立しない
思いやりを重視すると成果が下がる、成果を求めるなら厳しくするしかない、という二者択一ではありません。人が疲弊し、問題を言えず、離職や品質低下が起きる状態では、成果は続きません。
目的と期待を明確にし、その実現を妨げる条件を取り除く。思いやりとは、成果を出し続けられる状態を設計することです。
部長自身の回復も、組織の課題
部長が常に矛盾を抱え、休めず、判断力を失えば、組織全体へ影響します。相談できる上位者や同僚を持ち、問題を一人で所有しないことが必要です。
最初の一歩
現在抱えている矛盾を一つ選び、「変えられない条件」「変えられる条件」「現場の負担を示す事実」「上位者へ求める判断・支援」を整理してください。上からの圧力をそのまま下へ流さず、下からの苦しさを一人で抱えない接続方法を考えましょう。

