ExcelがIT変革を止めるとき――システムの外に残った仕事をなくす

ExcelがIT変革を止めるとき――システムの外に残った仕事をなくす

東京部長倶楽部の山木のぼるです。

 新しい基幹システムが稼働し、導入プロジェクトも終了した。ところが現場を見ると、担当者はデータをExcelへ書き出し、並べ替え、別の帳票へ転記しています。その人が休むと集計が止まり、数式の意味を説明できる人もいません。システムは入っても、仕事の仕方は変わっていない。この状態は珍しいものではありません。

Excelが悪いのではない

 Excelは、計算、試行、可視化に優れた道具です。問題はExcelそのものではありません。本来つながるべき情報の流れが、書き出しを境に切れ、人が内容を変換し、個人がファイルを管理していることです。どの数式で加工したのか、最新版はどれか、判断の根拠は何かが個人の中へ残ります。Excelは原因ではなく、仕事とシステムの間にある分断を知らせる症状なのです。

「Excelでやっています」の先を聞く

 部長が聞くべきなのは、Excelを使っているかどうかだけではありません。どのシステムから、どのデータを取り出しているのか。誰が何を加工し、何を判断し、次の誰へ渡しているのか。仕事の始点から終点までを追います。すると、同じ情報の二重入力、名称や単位の手作業変換、確認待ち、担当者だけが知る例外処理が見えてきます。

過去の帳票を新しいシステムへ移植しない

 システム更新時に「以前と同じ帳票が必要だ」と要求すると、古い仕事の形を新しい道具の上に再現することになります。その帳票は、誰が何を判断するために必要なのでしょうか。すべての項目を毎回確認しているでしょうか。同じ目的を、より直接的な情報で達成できないでしょうか。システム導入は、過去の手順を保存する作業ではありません。仕事の目的へ戻り、情報、役割、判断をつなぎ直す機会です。

廃止、統合、標準化、自動化の順で考える

 Excel作業を見つけると、すぐマクロや自動連携を考えたくなります。しかし、不要な作業を自動化すれば、不要な仕事が速くなるだけです。最初に、その帳票や加工を廃止できないかを考えます。次に、重複する作業を統合できないか、同じ目的の仕事を共通手順にできないかを検討します。それでも残る定型作業を、最後に自動化します。

現場の担当者を責めない

 現場がExcelを使うのは、システムでは足りない情報や、今すぐ必要な判断を補ってきたからです。「今日から使うな」と指示すれば、仕事が回らなくなります。担当者の工夫には、システム設計時に見落とした業務知識が含まれています。まず理由と例外を聞き、その知識を共通手順や判断基準へ移します。個人の工夫を奪うのではなく、組織の仕組みとして再設計するのです。

例外処理の持ち主を決める

 標準化しても、すべての例外をなくせるわけではありません。大切なのは、例外が起きた時に誰が判断し、その理由をどこへ残すかを決めることです。同じ例外が繰り返されるなら、個人の工夫のままにせず、標準手順やシステム要件へ戻します。データの意味と品質を誰が管理するかも明確にすれば、Excelを消した後に別の属人化が生まれることを防げます。

部長が見るべき成果

 削減したExcelファイルの数だけでは、変革の成果は測れません。二重入力が減ったか、情報を待つ時間が短くなったか、担当者が不在でも判断できるか、データの意味を関係者が共有できるかを見ます。IT変革とは、システムを入れることではなく、仕事の流れを変え、組織として判断できる状態をつくることです。

最初の一歩

 毎週使うExcel帳票を一つ選び、元データ、加工、判断、受け渡しを一枚に描いてください。その上で、「この作業をなくせないか」「まとめられないか」「共通化できないか」「最後に自動化できないか」の順で検討しましょう。

編集注:本稿は「部長になろう」本セッションのITシステム・DX・生産性向上に関する内容をもとに、一般読者向けに再構成したものです。

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