東京部長倶楽部の山木のぼるです。
古い端末をスマートフォンへ替えれば、見た目は大きく変わります。けれども、連絡を受けるたびに同じ場所へ戻り、別の端末で情報を調べ、紙へ記録し、勤務時間は自己申告のままなら、仕事の仕組みはほとんど変わっていません。
いま、病院ではPHSからスマートフォンへの移行が進み、電子カルテの閲覧、勤務時間の可視化、オンコール対応などへ活用する事例が報じられています。2024年4月から医師の時間外労働規制が本格化するため、端末更新を働き方の見直しへつなげる動きとして注目できます。
端末ではなく、情報の旅を見る
部長が見るべきは、何台導入したかではありません。情報がどこで生まれ、誰へ届き、何の判断に使われ、どこへ記録されるかです。途中で電話をかけ直す、別の場所へ移動する、同じ内容を転記する、人を探す、といった分断があれば、新端末の機能を増やしても負担は残ります。
まず一つの業務について、連絡、確認、判断、実行、記録の流れを描きます。そのうえで、スマートフォンで省ける作業と、人が対話して決めるべきことを分けます。
「いつでも連絡できる」を成果にしない
便利な端末は、いつでも人を呼び出せる環境もつくります。連絡が速くなっても、通知が増え、休息が妨げられれば、働き方は悪化します。緊急度による連絡経路、通知を受けない時間、代理者、応答の期限を決める必要があります。
勤務時間を可視化する場合も、監視のためではなく、過重労働の兆候を早く見つけ、勤務や役割を調整するために使います。数字を集めるだけでなく、誰が見て、どの水準で何を変えるかまで決めます。
現場と一緒に例外を設計する
医療のように安全が重要な現場では、標準手順だけでなく例外対応が欠かせません。通信できない時、端末を持てない場面、情報の確認が間に合わない時、誤送信や紛失が起きた時にどうするか。実際に使う人とともに決め、訓練し、運用後に修正します。
新しい端末を使わない人を「抵抗勢力」と決めつけてはいけません。その人が古い方法で補っている安全、速さ、安心があるかもしれません。理由を聞き、必要な機能と運用を見直します。
成果は、仕事と人に表れる
DXの成果は導入台数ではなく、不要な移動や待ち時間が減ったか、判断に必要な情報が早く届いたか、記録の重複がなくなったか、過重労働を早く把握できたか、顧客や患者への対応が良くなったかで測ります。
端末は仕事を変えるきっかけです。しかし、仕事の流れ、役割、判断、労務管理を変えるのは人です。まず、新しい端末を使う一つの業務を選び、導入前後の情報の流れを比べてみてください。
参考:朝香湧『ようやく脱PHS 病院のスマホシフトで動き出す医師の働き方改革』日経ビジネス、2024年2月8日。

