DXを成功させる経営の仕事――技術導入を組織変革へ変える

DXを成功させる経営の仕事――技術導入を組織変革へ変える

東京部長倶楽部の山木のぼるです。

【デジタル施策が増えても、会社が変わらない】

クラウド、データ分析、自動化などの案件が次々に始まり、導入実績は積み上がる。それでも顧客の体験、意思決定の速度、社員の仕事は大きく変わらない。こうした状態は、DXを技術の導入計画として扱った時に起きます。技術部門は予定どおり稼働させる責任を持ちますが、事業成果を生む仕事の変化まで単独では決められません。

このほどHarvard Business Reviewに掲載された論考は、デジタル変革をCEOが担う経営課題として整理しています。ここから部長が学ぶべきことは、DXを上層部やIT部門へ任せるのではなく、自分の事業と組織の変化へ翻訳することです。

【結論――DXは、価値・仕事・組織を一緒に変える】

成功の中心は最新技術ではありません。どこで価値を生むかを絞り、事業と技術の責任をつなぎ、人材、データ、意思決定を変え、成果を見ながら反復することです。

価値創出領域を絞る

全社で多数の実証実験を行うと、資源が分散します。顧客の不満、売上機会、品質、リードタイムなど、経営上重要な課題を選びます。「データを活用する」ではなく、「見積回答を三日から一日にする」のように変化を定義します。

事業側と技術側を一つの責任にする

事業部が要望を出し、IT部門が作るだけでは、稼働後に責任の空白が生まれます。顧客価値と業務成果を持つ事業責任者、技術とデータを持つ責任者が、同じ目標と優先順位を共有します。部長は両者の間を取り次ぐだけでなく、判断の場を設計します。

仕事を変える前提で導入する

新しいシステムを古い承認手順へ載せれば、速度は上がりません。不要な作業をやめ、役割と権限を見直し、現場が新しい情報で判断できるようにします。導入に合わせて教育するだけでなく、会議、評価、報告も変えます。

基盤と個別成果を両立する

データ基盤や共通技術は重要ですが、完成を待っていては価値が出ません。重点領域で小さく成果を出しながら、再利用できるデータ、ルール、人材を共通基盤へ戻します。個別最適と全社標準を往復させます。

成果指標を追い、やめる判断もする

導入件数、利用者数だけではなく、顧客価値、時間、品質、収益、社員負担の変化を見ます。仮説が外れた施策は、続ける理由を探すのではなく、修正または中止します。失敗から得た知識を次の施策へ残します。

経営人材としての部長を育てる

DXには、事業を理解し、技術者と対話し、人と仕組みを変えられる人が必要です。専門家へ丸投げせず、部長自身が目的と判断を担い、専門家の力を統合します。

DXの成功とは、システムが動いた状態ではありません。顧客への価値が変わり、社員の判断が変わり、組織が学び続ける状態です。技術を入れる計画から、会社の能力をつくる計画へ。そこに経営と部長の仕事があります。

出典:Dennis Careyほか「The CEO’s Playbook for a Successful Digital Transformation」Harvard Business Review(2021年12月)。本稿は同記事の論点を参考に独自に再構成しました。

Related Entry

実証実験を成果にしない――「試した」を「使われ続ける」へ変える

実証実験を成果にしない――「試した」を「使われ続ける」へ変え...

「Excelをやめろ」では仕事は変わらない――属人作業を仕組みに戻す

「Excelをやめろ」では仕事は変わらない――属人作業を仕組...

部分最適の強みを消さず、工場全体を変える――DXを広げる設計

部分最適の強みを消さず、工場全体を変える――DXを広げる設計

デジタルは目的ではない――現場の課題から改善をつくる部長

デジタルは目的ではない――現場の課題から改善をつくる部長

AIが答えを出す時代に、創造する喜びをどう守るか

AIが答えを出す時代に、創造する喜びをどう守るか

DXは機器の最適化ではなく、人と組織の変革から始まる

DXは機器の最適化ではなく、人と組織の変革から始まる