東京部長倶楽部の山木のぼるです。
2022年の個別セッションで、「テレワークになると部下が見えにくくなります。上司はやはり不安になるのでしょうか」という質問がありました。
同じ場所にいれば、部下が席にいるか、忙しそうか、誰と話しているかが自然に目に入ります。しかし、それは仕事の成果を理解していることとは同じではありません。姿が見えることで、管理できているつもりになっている場合もあります。
「見えること」と「仕事が分かること」を分ける
部下がパソコンの前にいることは確認できても、優先順位が適切か、顧客との約束を守れるか、問題を抱え込んでいないかまでは分かりません。反対に、離れて働いていても、期待する成果、期限、判断基準、途中経過が共有されていれば、仕事の状態は把握できます。
テレワークで問われるのは、部下を直接見られるかではなく、部下の仕事をどこまで具体的に説明できるかです。
管理を「在席」から「成果」へ変える
最初に、何をもって仕事が完了したと言えるのかを合意します。成果物、品質、期限、顧客や次工程への影響を明らかにします。
ただし、結果だけを渡して放置するのではありません。時間のかかる仕事では、途中で何を確認するかも決めます。進捗率だけでなく、前提の変化、判断に迷っている点、他部署から必要な協力、今後起こりそうな問題を共有します。
対話は、監視ではなく支援のために行う
不安だから毎日細かく報告させると、部下は仕事より報告に時間を使います。連絡が多いほど信頼が高まるわけでもありません。
定例の対話では、「予定どおりか」だけでなく、「何に困っているか」「上司が取り除くべき障害は何か」「本人が決めてよい範囲はどこか」を確認します。部下を問い詰める場ではなく、仕事を前へ進めるための場にします。
一律ではなく、本人に必要な支援を見る
自分で仕事を組み立てられる人もいれば、経験が浅く、短い間隔で確認した方が安心できる人もいます。同じ頻度、同じ方法を全員へ当てはめることが公平とは限りません。
仕事の難しさ、本人の経験、現在の負荷を見ながら、対話の頻度や任せる範囲を調整します。任せられるようになったら確認を減らし、新しい仕事では一時的に支援を増やします。
信頼は、曖昧さを放置することではない
信頼しているから何も確認しない、というのも管理ではありません。信頼とは、期待と責任を明確にしたうえで、相手へ判断を委ね、必要な時には率直に相談できる関係です。
部下の姿が見えない時こそ、上司は仕事の目的、成果、判断範囲、相談経路を言葉にする必要があります。これはテレワークだけでなく、複数拠点や専門職を率いる時にも必要な力です。
最初の一歩
部下の仕事を一つ選び、「期待する成果」「期限」「途中で共有してほしい事実」「本人が判断してよい範囲」「困った時の相談方法」を一枚に書いてください。
部下を見張る回数を増やす前に、仕事を見える状態にする。それが、離れて働く組織の管理を変える第一歩です。
編集注:本稿は2022年1月の個別セッションで寄せられた質問をもとに、2026年に一般的な組織運営の実践知として再構成しました。受講者、勤務先、職務など個人を特定できる情報は掲載していません。

