東京部長倶楽部の山木のぼるです。
年度計画には、売上、利益、顧客数などの目標が並びます。経営会議では十分に議論した数字でも、現場へ下りると「今年はこの数字を目指してください」という一言だけになっていないでしょうか。年次目標は到達したい結果であって、今日何をするかを直接教えてくれる数字ではありません。
2020年、ある新しい事業の計画づくりを支援した際、私が重視したのは、立派な計画書を完成させることではなく、年次の数字から日々のオペレーションが見える状態をつくることでした。
年次目標は、いくつかの要素でできている
売上は一つの数字に見えますが、顧客数、利用回数、単価、商品やサービスの構成によって決まります。利益には、提供に必要な費用、固定的にかかる費用、仕事の進め方によって生じる無駄が関係します。
そこで、目標を「何と何の掛け合わせで決まるか」に分けます。どの要素を伸ばすのかが違えば、現場の行動も変わります。顧客数を増やすなら、知ってもらい、問い合わせてもらい、利用を始めてもらう流れを見る。単価や構成を変えるなら、顧客に届ける価値と提供能力を確認します。数字を分けることは、責任を細かく押しつけることではなく、動かせる場所を見つけることです。
年から月、月から週・日へ落とす
年次目標を月数で割るだけでは、現実の動きになりません。繁忙と閑散、営業日、準備期間、人の配置、顧客が行動する時期を考慮する必要があります。
月ごとの目安ができたら、週や日の単位で確認できるものへ進みます。最終的な売上が出る前に、問い合わせ、提案、予約、継続利用、提供できる枠など、結果に先立って動く数字があります。現場が早く気づける先行指標を持てば、月末に不足を知るのではなく、途中で行動を変えられます。
数字の担当者だけを決めても動かない
指標ごとに担当を置くことは必要ですが、一人の努力だけでは動かない数字が多くあります。問い合わせを増やす人、顧客へ価値を説明する人、サービスを提供する人、日程や品質を支える人がつながって初めて、結果が生まれます。
部長は、「誰の数字か」だけでなく、「誰と誰の仕事がつながると動く数字か」を明確にします。さらに、必要な情報を同じ場所で見られるようにし、問題が起きた時にどこへ相談するかを決めます。数字を共通言語として使い、部門や役割の間をつなぐのです。
計画は、現実と比べて更新するためにある
計画と実績が違った時、担当者の努力不足と決めつけてはいけません。顧客数の想定が違ったのか、価値が十分伝わっていないのか、提供能力が足りないのか、前提としていた日程が変わったのかを分けて考えます。
計画は、当初の数字を最後まで守らせるためだけのものではありません。仮説と現実の差を早く見つけ、次の判断を良くするためのものです。毎月、結果だけでなく、どの前提が当たり、どの前提を変える必要があるかを振り返ります。
見える化を、監視に変えない
日次の数字が見えると、管理を細かくしたくなります。しかし、数字を人の査定だけに使えば、悪い情報が隠れ、数字を良く見せる行動が始まります。
目的は、責める相手を探すことではなく、問題に早く気づき、支援と判断を行うことです。「この数字が基準から外れたら、誰が何を確認するか」「どの範囲なら現場で試し、どこから部長が判断するか」を決めます。数字と権限を一緒に設計してこそ、現場が自律的に動けます。
最初の一歩
自部署の年次目標を一つ選び、その数字をつくる三つから五つの要素を書き出してください。次に、それぞれについて、月末を待たず毎週確認できる数字や事実を一つ決めます。最後に、基準から外れた時に誰が何を判断するかを加えれば、計画が日々の仕事へ近づきます。
編集注:本稿は、2020年に作成した新規事業の計画・運営設計に関する支援メモをもとに、支援先、人物、所在地、業種、単価、人数、資金調達先などの特定情報を用いず、2026年に一般的な部門・事業運営の実践知として再構成したものです。融資・税務その他の個別制度に関する助言を目的とするものではありません。

