東京部長倶楽部の山木のぼるです。
毎月の数字を追い、期限を守っていても、自分の仕事が誰の役に立ったかを感じられないことがあります。特に、顧客から離れた間接部門や製造現場では、日々の作業と最終的な価値の間に距離があります。
仕事を「誰かへのサービス」と見る
今回のHBR論文は、自分の仕事を誰かへのサービスとして捉えることが、仕事の意義と意欲を支えると論じています。相手は顧客だけではありません。同僚、後工程、取引先、地域、資本の提供者、家族や生活者など、仕事の先には複数の受け手がいます。
私は、この考えを精神論にしてはいけないと思います。意味のある仕事を語る前に、公正な報酬、安全、適切な仕事量が必要です。そのうえで、仕事が誰へどんな変化を届けたかを見えるようにすることが、部長の役割です。
工程の先にいる人を見せる
医療機器の工場でねじを締める人は、患者と直接会わなくても命を支えています。経理の正確な処理は、現場が安心して投資と採用を進める土台になります。人事の制度は、社員が力を発揮できる環境につながります。
ただし、部長がそう説明するだけでは十分ではありません。顧客の声、後工程からの感謝、問題が解決した事実を、仕事をした人へ戻します。数字と一緒に具体的な変化を共有することで、自分の工夫が相手へどう届いたかが分かります。
意味を改善の判断基準にする
仕事の受け手が明確になると、改善の方向も変わります。作業時間を減らすだけでなく、相手の待ち時間、迷い、やり直しを減らせたかを考えられます。自部署の都合で効率化しても、後工程の負担が増えれば、組織として価値は高まりません。
KPIレビューでは、数字だけでなく「誰にどんな変化が生まれたか」を確認します。これにより、目的が標語ではなく、仕事を選ぶ基準になります。
感謝を評価の代わりにしない
顧客や同僚から感謝されることは力になります。しかし、使命感を理由に無理な負担を正当化してはいけません。感謝は、適切な評価、処遇、役割設計の代わりではなく、それらを補うものです。部長は、意義と働きやすさの両方を整えます。
部門間の価値も往復させる
営業から製造へ、製造から物流へ、人事や経理から各部門へ、組織内にもサービスの受け手がいます。一方向に要求を渡すのではなく、受け手が何に困り、どの情報が役立ったかを互いに返すことで、部分最適を減らせます。
最初の一歩
自部署の主要業務を一つ選び、「受け手は誰か」「何が助かるか」「それを示す事実は何か」をチームで書き出してください。次の定例会で、KPIとともに一件の具体的な変化を共有しましょう。
編集注:本稿は、HBR論文「『誰かの役に立っている』という思いが、従業員のモチベーション低下を防ぐ」(東京部長倶楽部で2023年10月19日共有)を手掛かりに、論文原文を転載せず、山木の製造・組織運営経験を中心に再構成したものです。

