東京部長倶楽部の山木のぼるです。
多くの会社では、三年程度の中期経営計画をつくります。将来像を共有し、投資や人材配置をそろえるうえで有用です。一方、環境が大きく変わっても計画数字を守ることが目的になると、現場は古い前提に縛られます。
本日、日本経済新聞に「中計のない企業は株価が上がる」という論評が掲載され、中期計画の効用と限界が論じられています。タイトルだけを見て、中計を廃止すれば株価が上がると考えるのは早計です。株価との因果を単純に断定することはできません。私が注目したいのは、計画を何のために使うかという問いです。
中計は、未来を当てる予言書ではない
三年後の市場、技術、顧客行動を正確に当てることはできません。それでも、会社が何を大切にし、どの顧客へどんな価値を提供し、どの能力を育てるかは示せます。中計の価値は、細かな数字を的中させることより、組織の判断を同じ方向へ向けることにあります。
したがって、理念や長期ビジョンと、環境変化で更新すべき方法や数字を分けて考えます。すべてを固定すると硬直し、すべてを変えると一貫性が失われます。
一年単位で、成果と前提を確認する
部長は三年後の数字をそのまま部下へ渡すのではなく、今年の成果へ翻訳します。今期、顧客に何が変わるのか。どの能力をつくるのか。どの数字と非数値の事実を確認するのか。誰が責任を持つのか。
同時に、その目標が成立する前提を書きます。需要、価格、供給、人材、技術、法規制などです。前提が変われば、努力不足と決めつける前に、目標や方法を見直します。計画を変えることと、責任を曖昧にすることは別です。変えた理由、判断した事実、新たな約束を明確にします。
調整に時間を使いすぎない
中計づくりでは、多くの部門が数字を積み上げ、何度も調整します。しかし、調整に時間を使うほど計画の質が上がるとは限りません。重要なのは、部門同士の数字を合わせることより、依存関係と選択を明確にすることです。
何を増やすために何を減らすのか。どの投資を優先し、何を見送るのか。計画は、希望を全部並べる資料ではなく、限られた資源の配分を決めるものです。
部長は、大局と小局を往復させる
会社の長期ビジョンを自部署の一年の行動へ落とし、現場の結果と変化を上位判断へ戻す。これが部長の役割です。計画を守る人ではなく、目的を守るために計画を使い、必要なら更新する人でなければなりません。
まず、自部署の中期目標を一つ選び、「この目標が成立する前提は何か」を三つ書いてください。そして、その前提を見直す日を予定へ入れてください。中計が、年に一度読む資料から、判断を支える道具へ変わります。
参考:藤田勉『中計のない企業は株価が上がる』日本経済新聞、2023年10月20日。

