東京部長倶楽部の山木のぼるです。
新しい技術を試した。実証実験も無事に終わった。報告書には一定の効果が書かれた。ところが一年後に現場を訪ねると、誰も使っていない。このようなことは、自治体だけでなく企業でも起こります。
本日、日本経済新聞は、国が支援した地域のICT実証について、成果が残らなかった事例が多いと報じています。重要なのは数字そのものより、なぜ「試せたのに続かなかったのか」です。
実験が目的になると、現場の課題が消える
予算の申請や技術選定から始めると、「何を導入するか」が中心になります。本来は、誰がどの場面で困っているのか、その困りごとを解くと何が良くなるのか、今はなぜ解けていないのかから始めるべきです。
利用者の課題が曖昧なままでも、機器は設置でき、データは集められます。しかし、現場にとって使う理由がなければ、実験終了と同時に止まります。
終了後の責任者を、開始前に決める
実験期間中はプロジェクトチームや外部企業が動かしてくれます。問題は、その人たちが去った後です。誰が日々の運用を担うのか。故障や問い合わせに対応するのは誰か。継続費用はどの予算から出すのか。データを見て改善を決める責任者は誰か。
この答えがない実証実験は、技術的に成功しても組織としては未完成です。部長は開始前に、運用する部署と責任者を決め、実験チームへ参加してもらう必要があります。
成功条件と中止条件を、同時に置く
実験は成功を証明する行事ではありません。続ける価値があるかを学ぶ活動です。利用率、時間削減、品質、利用者の負担など、見る事実を絞ります。同時に、「この条件なら修正する」「この日までに改善しなければ中止する」という条件も決めます。
中止は失敗ではありません。小さな費用で、合わない方法を早く見つけた成果です。逆に、成果が曖昧なまま惰性で本格導入する方が、大きな損失を生みます。
報告書ではなく、次の運用へ学びを渡す
実験後には、結果だけでなく、利用されなかった理由、現場で変えた手順、必要だった支援、判断に使えたデータを残します。それを次の部署や次の案件が使える形にすることで、単発の実験が組織の学習になります。
DXは、新しい技術を多く試した組織が進むのではありません。試した結果から、目的、業務、責任、費用を更新できる組織が進みます。まず、現在の実験について「終了後は誰が使い続けるのか」を聞いてみてください。その問いが、実験を成果へ変える出発点です。
参考:日本経済新聞『地域のデジタル街づくり、「実験ありき」7割で成果なし』2023年1月11日。

