東京部長倶楽部の山木のぼるです。
【資源があることと、使えることは同じではない】
新型コロナウイルスの感染拡大が続く現在、病床の逼迫が大きな課題になっています。日本には多くの病床がある一方、コロナ患者へ対応できる病床の比率は限られ、地域によっては受け入れ先を探すことが難しくなっています。問題は、単純な病床総数だけでは説明できません。病院ごとの役割、専門人材、設備、患者移送、行政との情報共有がつながらなければ、資源は全体として動かないからです。
【結論――不足ではなく「接続不良」を疑う】
会社でも同じことが起きます。人はいる、設備もある、情報もどこかにある。それでも仕事が止まるのは、誰が何を引き受けるか、どの条件で仕事を渡すか、例外を誰が決めるかが定まっていないからです。部長は、自部署の資源を増やす前に、組織間の接続を点検する必要があります。
役割を平時から決める
危機が起きてから「できる部署がやる」と考えると、最も協力的な部署へ負担が集中します。通常時から、第一対応、専門対応、後方支援、最終判断の役割を決めます。役割は固定するだけでなく、負荷が一定値を超えた時に切り替える条件も必要です。
受け渡しの条件を共通化する
依頼する側は「緊急だから」と考え、受ける側は「情報が足りない」と感じます。必要な情報、品質、期限、受け入れ可否の回答時間をそろえます。形式を共通化すると、相手の善意や個人的な人脈に頼らず仕事を渡せます。
全体を見られる情報を持つ
各部署が自分の稼働率だけを見ても、全体の詰まりは分かりません。処理可能量、待ち件数、制約条件を同じ基準で共有し、どこへ振り分ければ全体が最も機能するかを判断します。数字を集めるだけでなく、更新時刻と責任者も明確にします。
例外判断の権限を明確にする
現場間の調整だけでは解けない事態があります。通常の担当範囲を越える、人員を一時的に移す、優先順位を変えるといった判断は、誰がどの情報で決めるかを定めます。上へ上げるだけの仕組みでは、危機の速度に負けます。
協力した組織が損をしない評価にする
部門別の成果だけを評価すると、他部署へ人や設備を出した部門が不利になります。全体への貢献を評価へ入れなければ、連携は掛け声で終わります。部長同士が共通目標を持つことが重要です。
病床の問題から考えさせられるのは、専門組織が多く存在しても、それだけでは社会全体の対応力にならないということです。個々の専門性を弱めるのではなく、役割、情報、判断、評価で接続し、必要な時に全体として成果を出せる状態をつくる。これは企業の部門間連携にも共通する課題です。
出典:日本経済新聞「コロナ病床、日本は英米の1割どまり 病院間の連携不足」(2021年2月23日)。本稿は同報道を組織連携の観点から考え、独自に解説したものです。医療上の判断を提供するものではありません。

