東京部長倶楽部の山木のぼるです。
上司が何を考えているのか分からない。部門の課題が見えない。そんな時、私たちは「もっと方針を説明してほしい」と相手を待ちがちです。しかし、待っているだけでは、自分の仕事と組織の方向を結びつける材料は増えません。
ある技術者は、リモートワークが多い環境で上司との会話が不足し、上司の問題意識をほとんど把握できていないことに気づきました。そこで、自分から話す機会をつくり、チームの課題を直接尋ねました。
対面機会が少ないことは、会話が減る理由にはなりますが、そのまま待つ理由にはなりません。オンラインでも、目的を明らかにした短い面談はつくれます。
聞いて初めて見えた四つの課題
上司から聞き取れたのは、大きく四つです。第一に、指示を待つだけでなく、自分たちから新しい仕事をつくり、他部門や他拠点と連携すること。第二に、チームの存在感を高め、自ら価値を生み出すこと。第三に、AIを含む新しい個人スキルを伸ばすこと。第四に、単純作業を自動化し、ミスと負荷を減らすことでした。
ここで大切なのは、四つの課題がその場で解決したわけではないという点です。確認できたのは、上司が何を問題と捉えているかです。それでも、曖昧だった「期待」が言葉になったことで、本人は自分がどこで貢献できるかを考える出発点を得ました。
報連相は、下から上へ報告するだけではない
報連相というと、進捗や問題を上司へ伝える行為を思い浮かべます。しかし、部長を目指す人には、上司から判断材料を取りに行く動きも必要です。会社や部門の重点課題、上司が困っていること、変えたい状態を知らなければ、自分の仕事を全体最適へつなげられません。
「何をすればよいですか」と答えを求めるのではなく、「今、チームの成果を妨げていることは何ですか」「半年後にどんな状態へ変えたいですか」「私が担える部分はどこですか」と聞きます。これは指示待ちを強める質問ではなく、自分で考えるための入力を増やす質問です。
上司の答えを、そのまま指示にしない
上司が挙げた課題は、重要な情報ですが、絶対的な正解とは限りません。現場の事実、顧客の反応、他部門の制約と照らし、優先順位を確かめる必要があります。四つすべてに一度に手を出せば、どれも中途半端になるでしょう。
まずは、自分の役割と強みから、最も影響を与えられる一つを選びます。たとえば単純作業の自動化なら、削減時間だけでなく、ミス、例外対応、保守する人まで見ます。他部門との連携なら、会議を増やす前に、共通の成果と必要な情報を明らかにします。
対話を一度の面談で終わらせない
上司の問題意識も、事業環境も変わります。一度聞いて理解したつもりになるのではなく、実行後の事実を持って再び話します。「この課題だと理解し、ここまで試した。分かったことはこれで、次はこうしたい」と返せば、対話は単なる情報収集から、意思決定の往復へ変わります。
上司から説明がないことを嘆くより、自分から入力を取りに行き、行動と結果を返す。この往復が、上司との信頼をつくり、視座を一段上げる練習になります。
最初の一歩
上司との30分を取り、「チームが今後半年で変えるべきことを三つ挙げるとしたら何ですか」と聞いてください。答えをメモしたら、①自分が直接動けること、②他者との協力が必要なこと、③上位判断が必要なことに分けます。そのうえで、今月試す一つを自分の言葉で提案してください。
編集注:本稿は2025年の個別セッション記録をもとに、本人、勤務先、上司、所在地、技術領域を特定できないよう匿名化・再構成しています。課題を把握した事実までを扱い、その後の解決や成果は断定していません。

