部下の集中を壊しているのは、上司かもしれない

部下の集中を壊しているのは、上司かもしれない

東京部長倶楽部の山木のぼるです。

 部下に集中して成果を出してほしい。そう願いながら、上司自身がその集中を壊していることがあります。「少しだけ確認したい」「すぐ返事がほしい」「念のため会議を開こう」。上司には数分の依頼でも、受け手は考えていた仕事を止め、頭を切り替え、終わった後にもう一度集中し直さなければなりません。

短い確認には、見えない代償がある

 今回取り上げるHarvard Business Reviewの論文は、部下の生産性が上がらない原因を、本人の能力や時間管理だけに求めてはいけないと指摘しています。頻繁な進捗確認、即時返信への暗黙の期待、目的の曖昧な会議は、仕事を細切れにします。熱心に管理しているつもりでも、深く考える時間を奪っているかもしれないのです。

 部長になると、複数の案件と関係者から情報が集まります。自分が判断するために、細かく報告を求めたくなる気持ちは分かります。しかし、部長の安心のために、何人もの集中を何度も中断させているなら、組織全体では大きな損失です。

まず、自分が生む中断を聞く

 最初にすべきことは、新しい時間管理術を部下へ教えることではありません。「私のどの行動が、皆さんの仕事を中断させていますか」と尋ねることです。言いにくい質問ですから、具体例を挙げてもらい、反論せずに受け止めます。チャットの連投、突然の会議、期限のない依頼、細かな承認待ちなど、仕組みとして直せるものが見えてきます。

 集中時間と応答時間を分けることも有効です。午前中は個人作業、午後の決まった時間に質問をまとめるなど、チームの仕事に合う境界を決めます。同時に、顧客事故や安全問題など、すぐ連絡すべき事態も具体的に定義します。何でも緊急にすれば境界は崩れますし、何も緊急でないことにすれば協力が止まります。

会議は、集める前に目的を決める

 会議を開く時は、情報を共有するのか、意見を広げるのか、何かを決めるのかを明確にします。資料を読めば済むなら、非同期で共有できます。決定する会議なら、誰が決めるのか、どの選択肢を比べるのかを事前に示します。参加者を増やすことが丁寧さではありません。必要な人が、必要な論点に集中できることが丁寧な設計です。

 ただ、会議を減らせばそれで終わりではありません。空いた時間へ別の会議や報告を詰め込めば、元に戻ります。集中して生み出した成果、手戻りの減少、判断の速さを見て、働き方を調整し続ける必要があります。

上司の行動が、本当のルールになる

 「返信は明日でよい」と言いながら、部長が夜中にも即答を求めれば、言葉より行動がルールになります。集中時間中に部長が例外を重ねれば、制度はすぐ形骸化します。守れなかった時は、誰かを責めるのではなく、なぜ緊急対応が必要になったのか、権限や情報の流れに問題がないかを振り返ります。

 生成AIも同じです。通知や資料を増やすためではなく、情報を要約し、質問をまとめ、非同期の共有を助けるために使えば、人が深く考える時間を守れます。部長の役割は、部下を忙しく見せることではなく、組織が価値を生む環境を設計することです。

最初の一歩

 次の一週間、自分が部下へ送った依頼、確認、会議招集を記録してください。その中から、即時でなくてよかったものを一つ選び、質問をまとめる時間、返信期限、判断者を明確にしてやり方を変えてみましょう。自分の行動を一つ変えることが、チームの集中を取り戻す第一歩です。

編集注:本稿はHBR論文の論旨を短く言い換え、山木の独自解説と実践方法を中心に再構成しています。原文・図表・原論文の四つの戦略は転載していません。

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