東京部長倶楽部の山木のぼるです。
改善活動を始める時、私たちはすぐに手法を探しがちです。会議のやり方を変える、システムを入れる、専門家に頼む、推進チームをつくる。どれも間違いではありません。しかし、2019年に改善支援の準備として私が書き出していたのは、解決策ではなく、クライアントに確認すべき「問い」でした。
手法より先に、現在地をそろえる
同じ「生産性を上げたい」という言葉でも、意味は組織によって違います。残業を減らしたいのか、納期を短くしたいのか、品質を高めたいのか、将来の人手不足に備えたいのか。目的が曖昧なままでは、活動量が増えても成果にはつながりません。
最初に確かめたいのは、対象となる組織と人数、責任者、推進部門の位置づけ、担当者が使える時間、これまでの改善経験です。さらに、いつ始め、どの手法を試し、何を目標とし、どんな定量・定性の変化があったかを確認します。これは相手を査定するためではありません。現在地について、関係者が同じ地図を持つためです。
「改善をした」という実績に注意する
研修を実施した。改善提案を何件集めた。会議を毎週開いた。これらは活動の記録であって、成果そのものではありません。改善後に顧客への価値が増えたのか、働く人の負担が減ったのか、判断が速くなったのか、同じ問題が再発しにくくなったのか。問いがなければ、手段がいつの間にか目的へ変わります。
反対に、数字だけを追うのも危険です。処理時間が短くなっても、別の部署に仕事を押しつけていれば、組織全体の生産性は上がりません。定量成果と同時に、現場の納得、部門間の連携、仕組みが実際に使われているかという定性面も見ます。
短期と長期を分けて問う
改善には、すぐに取り除ける無駄と、時間をかけて変える構造があります。三カ月で得たい変化と、一年後に実現したい状態を同じ言葉で語ると、期待が混線します。短期では事実を見えるようにし、小さな成功をつくる。長期では、役割、意思決定、育成、データの持ち方まで見直す。時間軸を分けることで、焦りと先送りの両方を防げます。
問いは、答えを押しつけないためにある
支援する側が経験豊富であるほど、「原因はこれだ」「この方法が効く」と早く言いたくなります。しかし、現場には外から見えない制約や知恵があります。良い問いは、経営、推進担当、現場のそれぞれが見ている事実を持ち寄らせます。そして、誰が悪いかではなく、どこで仕事が滞り、何が判断を難しくしているかへ対話を向けます。
部長の役割は、すべての答えを持つことではありません。組織が正しい問題を見つけ、試し、結果から学べるようにすることです。そのため、改善の出発点は「何を導入するか」ではなく、「何を良くしたいのか」「なぜ今なのか」「誰が成果を受け取るのか」です。
始める前に答えたい五つの問い
私は、改善を検討する時には、少なくとも五つを一枚にまとめることを勧めます。①良くしたい状態は何か、②それが必要な理由は何か、③現在を示す事実は何か、④誰が責任を持ち、誰の協力が必要か、⑤三カ月後と一年後を何で判断するか。この五つに答えられなければ、手法選びを少し待つ価値があります。
最初の一歩
次の改善会議の前に、関係者へ五つの問いを送り、それぞれ一人で回答してもらってください。会議では解決策から始めず、回答が一致している点と違う点を並べます。最初に解くべきなのは、業務上の問題よりも、問題の見え方のずれかもしれません。
編集注:本稿は、2019年に作成した改善支援の事前質問メモをもとに、個別の組織や案件を特定できる情報を用いず、2026年の東京部長倶楽部の考え方に沿って再構成したものです。

