満足度が高いのに、新しい顧客が増えない――平均点では見えない経営課題

満足度が高いのに、新しい顧客が増えない――平均点では見えない経営課題

東京部長倶楽部の山木のぼるです。

 「顧客満足度は高い。だから、私たちのサービスは順調だ」。数字だけを見れば、そう判断したくなります。しかし2019年、ある地域に根ざしたサービス組織の調査を考える中で、私は別の問いを持ちました。満足している既存顧客が多いことと、新しい顧客に選ばれていることは、同じではないのではないか。

高い満足度が教えないこと

 満足度調査に回答するのは、原則として、そのサービスをすでに利用した人です。何度も利用している人、長く関係を持つ人の割合が高ければ、評価が高くなることは自然です。それ自体は大切な強みですが、まだ利用していない人や、一度検討して別の選択をした人の声は入っていません。

 つまり、高い満足度は「現在の顧客に価値を届けられている」証拠にはなっても、「将来も新しい顧客に選ばれる」証拠とは限りません。良い数字を疑うというより、その数字が誰を含み、誰を含んでいないかを確かめる必要があります。

一つの数字を、別の数字とつなぐ

 調査結果を見る時、私は満足度だけを独立して見ません。新規と継続利用の構成、顧客の年代や地域、紹介による流入、ウェブサイトなど情報発信の認知、問い合わせから利用までの時間といった指標をつなぎます。

 例えば、既存顧客の評価は高い一方で、新規顧客の割合が下がっているなら、サービスの品質ではなく、知ってもらう経路や最初の接点に課題があるかもしれません。若い世代から選ばれていないなら、提供価値が合わないとは限らず、情報の届き方や予約・相談のしやすさが障壁かもしれません。紹介が特定の経路に偏っていれば、その関係が変化した時のリスクも見えます。

数字の裏側には、顧客の行動がある

 部長が見るべきなのは、数字の良し悪しだけではありません。顧客がどこで知り、何を期待し、どの段階で迷い、なぜ選び、利用後に何を感じたかという一連の行動です。平均値では、その途中にあるつまずきが消えてしまいます。

 大切なのは、数字を見てすぐ施策へ飛ばないことです。「広告を増やそう」「ウェブサイトを作り直そう」と決める前に、どの顧客層が減り、どの接点で離れ、現場にはどんな問い合わせが届いているかを確かめます。定量データと、顧客や現場の具体的な声を往復することで、打ち手の精度が上がります。

新規顧客を増やすことだけが正解ではない

 もちろん、すべての組織が顧客数を増やすべきだという話ではありません。提供能力に限界がある時に、集客だけを強めれば、待ち時間や品質が悪化し、既存顧客の信頼を損ねます。地域や対象を絞り、今いる顧客へ深い価値を届ける戦略もあります。

 だからこそ、何を目指す組織なのかを先に確認します。新しい顧客へ広げるのか、特定の顧客をより深く支えるのか。広げるなら、受け入れる仕組みと人員はあるか。目的、顧客構成、提供能力を一緒に見ることが、責任ある判断につながります。

部長は「良い数字」で思考を止めない

 業績が悪い時には、多くの人が原因を探します。難しいのは、数字が良い時です。安心した瞬間に、環境の変化や将来の弱点を見落とします。部長には、現場の努力を正当に認めながら、「この数字だけでは何が分からないか」を問い続ける役割があります。

 満足度を否定する必要はありません。高い満足度を強みとして守りながら、その外側にいる人へ目を向ける。良い数字を、次の成長を考える入口にするのです。

最初の一歩

 自部署で評価の高い指標を一つ選び、その横に「この数字に含まれていない人・行動は何か」と書いてください。次に、それを補う指標を一つだけ選びます。満足度なら新規顧客比率、継続率なら離脱理由というように、二つの数字をつないで見ることから始めましょう。

編集注:本稿は、2019年の顧客調査に関する分析メモをもとに、組織、地域、業種、数値その他の特定情報を用いず、複数の組織に通じる実践知として、2026年の東京部長倶楽部の考え方に沿って再構成したものです。

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