規則どおりに断る前に――顧客の「本当の目的」を聞く

規則どおりに断る前に――顧客の「本当の目的」を聞く

東京部長倶楽部の山木のぼるです。

 組織には、規則や標準手順があります。品質をそろえ、安全を守り、誰に対しても公平に対応するために欠かせないものです。一方で、現場に寄せられる要望は、いつも規則の範囲にきれいに収まるとは限りません。そのとき「当社では対応していません」と答えるだけで、本当に十分でしょうか。

断ること自体が問題なのではない

 2019年、あるサービス現場について助言していたとき、通常は提供していないものを利用者から求められた事例がありました。現場の回答は、規則に照らせば間違いではありません。安易に例外を認めれば、品質、安全、公平性、担当者の負荷に別の問題が生まれます。

 しかし、私は一つ気になりました。その人は、なぜそれを必要としていたのか。表面に現れた要望を断る前に、実現したいことを聞いていたのか、という点です。規則を守ることと、相手を理解することは対立しません。むしろ、事情を理解したうえで守るべき境界を説明した方が、納得のある対応になります。

「要望」と「目的」を分けて考える

 人は、自分が知っている解決策の形で要望を伝えます。「この資料をください」「この方法で対応してください」「今日中に決めてください」。けれども、それは目的そのものではなく、本人が思いついた一つの手段かもしれません。

 必要なのは、要望の奥にある目的を確かめることです。資料が欲しいのは、家族に説明するためかもしれない。今日中の回答を求めるのは、翌日の重要な判断に間に合わせたいからかもしれない。目的が分かれば、求められた方法は実行できなくても、別の資料、別の手順、別の日程で支援できる可能性が生まれます。

例外対応を、三つの対話に分ける

 第一は、受け止めることです。「できません」と結論を急がず、「どのような事情で必要なのでしょうか」と尋ねます。ここでは、できると約束する必要はありません。理解しようとする姿勢を示すことが大切です。

 第二は、目的と制約を分けることです。相手が実現したい結果、期限、困っている点を確認し、同時に、自分たちが守るべき安全、法令、公平性、業務上の条件を整理します。

 第三は、選択肢を示すことです。要望どおりにはできない場合でも、「ここまではできる」「この方法なら可能」「この窓口なら相談できる」と代替案を伝えます。単なる拒否から、共同で解決策を探す対話へ変わります。

一件の例外から、仕組みを学ぶ

 同じ要望が繰り返されるなら、それは利用者が規則を理解していないだけとは限りません。案内が分かりにくい、標準サービスに抜けがある、部署間の連携が途切れているという組織側の問題かもしれません。

 部長の仕事は、現場に「もっと丁寧に対応しなさい」と言うことだけではありません。どのような例外が、なぜ起き、どこで判断に迷ったかを記録し、規則、説明、権限、連携方法を見直すことです。相手の声を個別対応で終わらせず、組織の学習へ戻す。そこに管理職の付加価値があります。

最初の一歩

 次に通常外の要望を受けたら、回答する前に一度だけ、「それによって、何を実現したいのでしょうか」と尋ねてください。そして、目的、守るべき制約、提示できる代替案を一行ずつ書き出します。規則を曲げるためではなく、規則を守りながら相手に近づくための一歩です。

編集注:本稿は、2019年の匿名化した顧問打合せメモをもとに、固有の組織・人物・業務を特定できる情報を除き、2026年に一般的な管理職の実践知として再構成しました。医療・法律上の助言を目的とするものではありません。

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