入社4日目に送別会を開かれた新入社員――制度にない選択肢をどうつくるか

入社4日目に送別会を開かれた新入社員――制度にない選択肢をどうつくるか

東京部長倶楽部の山木のぼるです。

 大学院修了を前に、私は指導教授から「もう1年研究を続け、学位取得につなげてはどうか」と声をかけられました。しかし、すでに就職先は決まっています。普通に考えれば、予定通り入社するか、内定を辞退して大学に残るかの二者択一です。

 私は自分だけで結論を出さず、内定先の人事部長へ事情と希望を率直に相談しました。その結果、4日間の新入社員研修に参加し、5日目から休職して大学へ戻るという異例の案が認められました。事情を知った同期は、入社4日目に私の送別会を開いてくれました。

制度に書かれていないことと、実現できないことは同じではない

 制度は、組織を公平かつ安定して運営するために必要です。しかし、制度ですべての事情を事前に想定することはできません。規程にない相談を直ちに拒否すると、人の成長機会や組織にとっての可能性を失うことがあります。反対に、本人の希望だけで例外を認めれば、周囲から特別扱いに見え、制度への信頼を損ないます。

 大切なのは、制度を守るか人を優先するかという二者択一にしないことです。制度が守ろうとしている原則を確認し、その原則を損なわずに目的を実現できる手順を考えます。

希望だけでなく、果たす責任も示す

 私の場合、会社との関係を捨てて研究を選んだのではありません。研修を受け、正式な休職手続きを取り、翌年には改めて新人研修へ戻りました。研究を続けたいという希望と、会社の一員として果たす責任の両方を示したからこそ、会社側も選択肢を検討できました。

 部下から異例の相談を受けた時も、本人にとっての意味だけでなく、業務への影響、期間、復帰条件、成果の確認方法、周囲への説明を整理します。「認める・認めない」を急ぐ前に、双方が負う責任を明確にします。

公平とは、全員を同じに扱うことではない

 状況が違う人を一律に扱うと、形式は同じでも実質的な機会が失われることがあります。一方、理由が説明できない例外は不公平感を生みます。柔軟性と公平性を両立する鍵は、判断基準を説明できることです。

 なぜこの例外が本人と組織の双方に意味を持つのか。どの条件が満たされたから認めるのか。他の人から同様の相談があった時にも使える基準か。ここを言葉にすることで、一度限りの特別扱いを、組織が学べる判断へ変えられます。

関係を壊さずに希望を伝える

 相談する前から「会社は認めないだろう」と決めつければ、新しい選択肢は生まれません。要求として押しつけるのではなく、目的、事情、会社への影響、自分が担う責任を率直に伝え、相手と一緒に方法を考えます。

 4日目の送別会は、短期間でも同期との関係ができ、私の選択が受け止められたことの象徴でした。翌年に改めて研修へ参加したため、結果として二つの同期を持つことにもなりました。制度にない道を選んでも、対話と責任があれば、関係は切れず、むしろ広がることがあります。

最初の一歩

 現在「規程にないから難しい」と止まっている相談を一つ選び、「制度が守る原則」「本人と組織にとっての目的」「期間」「本人が負う責任」「復帰・終了条件」「周囲への説明」を整理してください。原則を守りながら、手順を柔軟にできないか考えてみましょう。

編集注:山木の実体験をもとに、公開記事として会社名、大学名、関係者名を一般化しています。

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