東京部長倶楽部の山木のぼるです。
【危機では、問題が一つずつ起きるわけではない】
新型コロナウイルスの感染拡大のような危機では、売上、社員の安全、供給、資金、顧客対応が同時に揺らぎます。ところが組織は、営業は顧客、製造は供給、人事は勤務制度というように、自分の持ち場だけを守ろうとしがちです。各部門の判断が個別には正しくても、会社全体では矛盾することがあります。
【結論――危機対応は「問いの一覧」で全体をつなぐ】
危機の最中に完全な情報はそろいません。だからこそ、部長は答えを急ぐ前に、何を見落としてはいけないかを問いとして共有します。ここでは、八つの観点に整理します。
1. 誰のどの価値を守るのか
すべての商品やサービスを同じように守ることはできません。顧客にとって停止すると最も困る価値を特定し、資源を集中します。
2. 社員の安全と継続性をどう両立するか
安全を守ることと、事業を続けることを対立させません。交代要員、遠隔対応、権限委譲を含め、人が欠けても止まらない形を考えます。
3. 供給のどこが最も弱いか
主要取引先だけでなく、代替の利かない部品、物流、情報システムを洗い出します。在庫の量より、途切れた時の影響と復旧時間を見ます。
4. 資金はどこまで持つか
売上予測を一つに決めず、複数の期間と悪化幅で資金を確認します。希望的な計画より、どの条件になったら何を止めるかを先に決めます。
5. 意思決定を誰に寄せるか、どこへ渡すか
危機時にすべてを上層部へ集めれば、判断が詰まります。全社で統一する事項と、現場に任せる事項を分け、例外の相談先を明確にします。
6. 情報をどう更新するか
昨日の正解が今日は誤りになることがあります。情報源、更新時刻、判断の根拠を記録し、古い前提を使い続けない仕組みを持ちます。
7. 社外の誰と連携するか
顧客、取引先、同業他社、行政など、自社だけでは解けない課題を早く特定します。連携は余裕ができてからではなく、危機の初期に始めます。
8. 何を学びとして残すか
対応が落ち着いたら元へ戻るのではなく、有効だった権限委譲、会議、情報共有を通常運営へ残します。失敗も責任追及だけで終わらせず、次の備えへ変えます。
八つの問いは、チェックリストの消化が目的ではありません。部門ごとの答えを持ち寄り、矛盾を発見し、会社として優先順位を決めるための共通言語です。部長には、目の前の火を消しながら、危機を越えた後に以前より強い組織を残す責任があります。
出典:DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー「新型コロナウイルス対策で企業が自問すべき8つの問い」。本稿は同記事の論点を参考に、部長の実務向けに独自に再構成しました。

